卒業制作優秀作品集2017
芸術学科

福田 幸二

写真家の宿命
――攪拌する畠山直哉の表現について――

写真家が必然的に負ってしまう宿命。それは出来事に直面したときに、強い衝撃波として襲いかかってくる。畠山直哉は、3.11というカタストロフによって作家としての同一性、表現性に亀裂が生じたと言われる。私性を見せない厳格な表現者として、写真というメディウムの考察をしていた畠山。この論考において、彼の対談で「今の声」を4回にわたり聴き取りつつ、過去のさまざまなテクストや批評などを通して表現の狭間に開いた問題について考察していったものである。

担当教員によるコメント

写真家畠山直哉の最新の成果である《まっぷたつの風景》展にくり返し足を運び、ゲストとの対話にも毎回耳を傾ける。さらには写真家自身のテクスト、過去の展覧会や写真集、その他の活動を示す映画など、できる限り資料にあたろうとした姿勢がまず好ましい。浮びあがるのは、故郷の大震災を経験した写真家における「自然」という概念の変容であり、「私」のありようへの問いつめ、そこから現在に要請される「写真」の可能性への手探りである。写真芸術が本来もつ諸問題にも触れ、安易な震災芸術論議に与しないところがよい。本質主義を離れざるをえない宿命の本質を見据え、つまりは「写真の話を超えたい」とする写真家の希望の意味を捉えようとする。

教授・平出 隆

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