海辺の小さな火葬場

金崎 由女

作者によるコメント

海辺の小さな村の外れに建つ、小さな火葬場の設計。死を日常から離れたことではなく日常の延長線上にあるものだと考え、その体験の背景にはどんな景色が見えているのが良いのか、考えた。

担当教員によるコメント

自身の祖父の故郷である島根県の小さな村の火葬場。祖父の葬儀の経験から、現代の火葬場が日常から隔離されて死を隠蔽する傾向にあることへの疑問を持ったところから始まっている。生活の場であった集落の風景や、美しい海の風景を見ながら故人の思い出を語り合い、生まれ育った土地の風景の中で親しい人々に穏やかに見送られる場を提案することがテーマとなっている。火葬場へのアプローチから始まって人がどのように移動し、それぞれの場からどんな風景が見え、何を感じるかについて、時間の経過と太陽の位置まで含めた配慮が、建物の配置や方位、地形との関係、開口部の形状など、建築のあり方のすべてを決めている。その優しい心遣いによって景観と調和する美しいデザインとしてまとめることができた。

教授・岸本 章