川上 桃子

作者によるコメント

モノに溢れた豊かな今、モノを感情的に手放すことが多くなった。確かに存在する小さな立方体たちも、やがて形を無くし、消えていく。「モノ」が残す痕跡、感情の視覚化。

担当教員によるコメント

習慣とはおそろしい。無意識のうちに、とんでもない事態を引き起こしているかもしれない。普段何気なく使い捨てる物の存在とどう向き合うのか、そういったことを考えはじめるきっかけを与える作品である。課題解決というより問題提起であり、アート性の高い表現として、見る者に、深い印象を与える。万物は流転する。風化し、大気中に埃や塵となって漂い、私たち人間の身体を通り抜けていく。墨をかすかに含む氷が、宙にぶら下がっている。その溶けていく様を見つめる作品である。立ち止まり、しばし時間を共有する。雫が滴り落ち、足元に、浅い水溜りをつくるが、やがて気化する。あとには、画布に染み込んだ炭化した塵の形跡が、かすかに残り、その存在を 私たちに気づかせる。

准教授・湯澤 幸子