Original font "Atlantica Roman"

小西 遼平

作者によるコメント

海図及び世界地図のための書体
印刷された文字よりも、ディスプレイや液晶画面に映る文字の方が多く目にする現代に、どんな書体を作ることにどんな意味があるのか考えました。そして私が見つけたものは15~16世紀、大航海時代に作られた海図及び世界地図でした。それらは当時もっとも権威のある印刷物で、そこには地形や距離や航路を伝える役割以上の造形美があり、大勢の人から注目されていました。そんな素晴らしさを参考にし、それを現代に伝え、後世に残すことをコンセプトに書体を製作しました。

担当教員によるコメント

欧文書体のデザインは大文字・小文字合わせても少ないから楽だ、などといわれたりするけれども、実際にはこれらに加え、数字、スモールキャップ、アクセント、記号類、合字、飾り字などを揃えなければならず、さらにボールドやイタリックといったファミリーがそれぞれ必要となり、手がけなければならない字種は膨大な数になる。この作品も、海図の文字表記というシンプルな目的をもつローマン体だが、最終的には1,566字をデザインすることになった。毎回新たな難題を見つけてきては、翌週にはそれが見事解決しているという、いわば自分自身との戦いに打ち勝つ様子を何度も見せてもらった。終わりの見えない苦しい作業だったが、むしろ夢中になって没頭した小西君の楽しげな心境が、この優雅なローマン体の形ににじみ出ていると思う。

非常勤講師・山本 政幸