白の故郷

扇田 優紀

作者によるコメント

生かしてくれる存在と生かされる存在。自分は誰かに生かされて今存在すること。そんな二つの関係性を描いた、無性の愛を注ごうとするヒツジと、それを拒む不器用なオオカミの物語。人形アニメーションの手法を使い、まるで本当に体温をまとっているかの様な毛並みや質感を与えることで、優しく見る人の心に寄り添う様な温かみと、二次元には無いリアリティと新鮮さを追求した。

担当教員によるコメント

普段からリアルな動物の造形を得意とし、絵本やポスターなどにも展開していた扇田優紀が最後にたどり着いた表現が人形アニメーションだ。まずは人形とセット制作、それから少しずつポーズを変えてコマ撮りするという非常に手間のかかる技法である。その人形は外見だけでなく様々なポーズや表情を再現できるような構造を必要とするため、制作にはかなりの工夫と時間を要する。しかしながら、作者が作った人形はその体躯から毛並みや眼球にいたるまでとてもリアルで見事な完成度だ。白を基調に象徴的に装飾された森のセットも神々しい神秘性とスケールを感じる。緻密にアニメートされたキャラクターの芝居からは感情の交錯が伝わる。それらすべての要素が合わさって「命」の物語が見事に紡ぎ出されたのである。

教授・野村 辰寿

作品動画