Graphic Design Matrix グラフィックデザインの研究とそのシステム

前澤 拓実

作者によるコメント

グラフィックデザイン生成ツールを制作した。独自のデザインアルゴリズムを用い、気象データを使用した動的なグラフィック生成が可能だ。制作のきっかけは2015年に発表された東京オリンピックエンブレム。デザイン関係者の曖昧な反応の数々、人により違うデザインの定義。私の中のデザインとはという疑問がより深いものとなった。そこで本研究の目的をグラフィックにおける構造発見とし、仮説の証明として作品の制作を行った。本制作をグラフィックデザイン再定義への第一歩とする。

担当教員によるコメント

本作は気象データを用いて生成された視覚情報を3次元上にマッピングし、回転やズーミングなどの視点移動を交えてユーザーが自由にキャプチャーすることが可能なグラフィック生成システムである。一見すると美しいデータヴィジュアライザーのように映るが、その裏にはグラフィックの理論的考察を高度に洗練させることで、視覚表現がコンピュータアルゴリズムによるシステムへと代替え可能であることが暗に示されている。過去に培われてきた先行理論を丹念に読み込みながら形と意味の関係を体系立てていくプロセスや、そこで生まれた仮説をシステムへと実装するなど、骨太な考察と実験に裏付けられたハイレベルな試みだが、それは未だにグラフィックデザインが個人の感覚や嗜好に依存した“絵”と混同されていることへの問いかけであり、グラフィックデザインの再・理論化という壮大な思索の序章でもある。

講師・中野 豪雄

  • 作品名
    Graphic Design Matrix グラフィックデザインの研究とそのシステム
  • 作家名
    前澤 拓実
  • 作品情報
    映像、アプリケーション
    技法・素材:openFrameworks
  • 学科・専攻・コース