都市のマンション用ウォーターブラインド

根岸 美月

作者によるコメント

散歩をしていたらマンションのベランダによしずが立てかけられていた。
日本の趣あるプロダクトだったものが、機能的だけれど不恰好なものとして受け継がれていくさまを残念に感じるとともに、常にカーテンをしめきってエアコンをいれっぱなしにする生活に味気なさを覚えた。「よしず」をはじめとする日本の「涼をとる」という文化を現代のエラーに落とし込むことによって閉塞的になっているウチとソトの関係を豊かにするプロダクトを提案する。

担当教員によるコメント

夏のヒートアイランド現象は年々その猛威を増しており、本作品は社会的ニーズに後押しされる作品である。日本文化として古くより使われてきた葦簀(よしず)のメカニズムを徹底研究したことにより、水の留まりと通過する風の関係を巧みに形状化している。構造的にも水の居座りを良くする樹脂製メッシュの選択、モジュール化や設置サイズ可変に対応できるハニカム形状など、リアリティとユーテリティを考慮した葦簀のリビルドは高く評価されている。彼女のあくなき実験から生み出されたハニカムの幅やオクリ、ピッチもハニカムメッシュが作り出す光のコントロールに大きく影響し美しく表現されている。次なるマンション用屋外ブラインドの典型になると確信する。

教授・中田 希佳