1995年の海

宮川 知宙

担当教員によるコメント

「1995年の海」と題された本作は、へその緒の様な電源ケーブルが、浮遊した体を呈するモニターに繋がっている。そこに映し出されるのは、世界を圧巻したゲームソフト、ポケットモンスターの、初代に使われた海原のイメージである。阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件が相次ぎ、そしてポケモンが誕生した1995年を起点とし、閉塞感に覆われていった日本社会の中で、宮川と同世代の子供達は、繰り返しこのデジタル画面の海原を訪れた。現実の有機的海と遠く離れ、規格通りに動くビットの集積でしかないこの海は、だからこそ、宮川やその世代が帰属する時代や社会を象徴し、そこを基とし派生した様々な問題を提起する原風景となる。長い時間をかけて思索されたテーマと、端的な表現が結実した、意欲作である。

教授・笠原 恵実子

  • 作品名
    1995年の海
  • 作家名
    宮川 知宙
  • 作品情報
    技法・素材:65インチ4Kモニターに「ポケットモンスター」から引用された映像、モニターアーム、延長コード
    サイズ:インスタレーションサイズ可変
  • 学科・専攻・コース