”クラウド”のデータビジュアライゼーション

田部 景思郎

作者によるコメント

”クラウド”のデータビジュアライゼーションは、トラックの走行記録を雲で表現した作品です。多摩美術大学の卒業制作の一環として制作しました。水滴が集まって雲ができるように、人が集まると群衆ができます。「雲と群衆は似ているのではないか」という仮説から、群衆(crowd)を雲(cloud)で表現することを考えました。物流に携わる人たちが生み出した群衆、その群衆を元にして雲を描くことで、これまで見えてくることのなかった特徴や傾向、物流業界の抱える問題を可視化していきます。

担当教員によるコメント

常に動き続け留まることのない多様な「雲」のカタチに魅力を感じてきた作者が、「群衆」の動きを「雲」の動きに見立てて表現したのが本作である。トラックの運行情報に含まれる速度、進行方向、エンジン回転数、ブレーキや危険運転の記録など、様々なパラメータを用いて「群衆」を可視化した。鳥瞰視点からは地域ごとの特徴が分かりやすく示されているが、地上から見上げる「人の視点」への切り替えによって渋滞は「入道雲」、空いてる道を走る車両は「飛行機雲」という具合に、雲の表現が群衆の状態を見事に表している。また、ドライバーが見ている光景を想像しながら雲の動きを眺めることもできるだろう。分析的な手続きで成形されたデータに比喩と表現を重ねることで生まれた、「情緒的な観察」が可能なデータビジュアライゼーションである。

講師・中野 豪雄