祭りの声

橋本 春日

作者によるコメント

今年私の地元の祭が1つ消え、当たり前にあった祭が消えたことに言いようのない物悲しさを感じ、「祭」をテーマにしました。東京・神奈川の祭に行き、華やかで魅力的な明るい面と町の過疎化や少子化の暗い面のギャップが思った以上に深いことを実感しました。この事実をもっと多くの人に知ってもらい、祭が行われることの貴重さや魅力、鑑賞者の地元の祭への関心を持ってもらいたいと考え、この作品を制作しました。

担当教員によるコメント

作者の橋本春日の地元の祭がなくなったことが、この作品の制作動機となった。橋本は卒制のテーマを「祭」に決めて、多くの祭を丁寧に取材し、「祭の魅力」と「祭の現実」を伝えたいと考えた。そのふたつは最終的な作品の展示構成にもなった。「祭の魅力」を伝えるゾーンでは、自身が取材し撮影した祭を写真集として纏め、その土地の特産品と一緒に美しく木箱に納めた。この箱は祭を存続させるための寄付や販売に使われることを想定している。もうひとつの「祭の現実」のゾーンでは、祭の主催者や神職の方へのインタビュー映像を上映した。後継者や資金不足など様々な問題を本音で語るドキュメンタリーは見る者の心を揺さぶった。鑑賞者が祭が行われることの貴重性や、祭が当たり前のように行われる社会の豊かさについて、自然と考えさせられる質の高いソーシャルクリエイティブとなった。

教授・宮崎 光弘