watage

中山 阿莉沙

作者によるコメント

手のひらに乗せても感知出来ない重さの綿毛。その集積であるwatageは今まで鑑賞者が知覚していなかった微かな大気の流れを見せる。儚げなwatageはいつまで揺れ続けるのか。いずれこの作品が朽ちた時、土に植えまた芽吹く日を夢見る。

担当教員によるコメント

まだ肌寒い早春の卒業式も過ぎると、タンポポが開花して綿毛のシーズンが始まる。作者が作品の素材を模索するなかで綿毛に着目したのは二年も前にさかのぼる。繊細な綿毛を使って風の可視化を試みた。その後は綿毛の素材にもっと正面から向き合い、複数の綿毛を組み合わせた構造体を生み出す独特の手法に行き着いた。オブジェと呼ぶにはあまりにも小さいが、暗闇で浮かびあがる姿には気品があふれている。展示台の上でかすかな気流に揉まれるように反応する様子に観る側の集中力が高まる。生命の種を宿して本来なら草原を自由に舞ってどこか遠くへ飛んでいったかもしれない儚い綿毛は、ここで確かな存在感を示している。小さいミクロな世界であるが、そこには自然や宇宙につながってゆく空間意識を見てとることができる。

教授・森脇 裕之