KABA.

杉浦 太河

担当教員によるコメント

絵画の枠を超えたところに広がる我々の現実世界から、鑑賞者の影をも思わせる人物の残像を通り越し、中央に鎮座する赤錆びた河馬へと目を誘う描写力は群を抜く力量である。檻の中の異様なまでの緊張感、その反対の寂しさをも感じさせる光景は、「見えないもの」にどう対峙するかを試しているようだ。5年前、静岡から進学相談会へ足を運んだ無垢な青年は、この4年間で多くのものを見つめ観察し、自己の中で解決を繰り返すうちに、独自の詩的な感性を表現できる作家に成長したことが素直に嬉しい。

准教授・千々岩 修