無哲を犯すは悠久の皇帝

後藤 将仁

担当教員によるコメント

男性器を頭に持つ中性的身体の、その足元には苦しみと、先端には喜びを表す顔が付いている。「無哲を犯すは悠久の皇帝」と題された本作は、塑像原型を用いた古典的具象彫刻の制作方法によるが、そのテーマはファルス中心主義社会ヘの揶揄に満ちたクリティシズムであり、結果、論争を呼ぶ現代的作品へと仕上がっている。これまでも同様のテーマを追ってきた後藤は、男性である自らの性と世界の支配の歴史を考察し、自嘲も込めた批判的形態の造形とその意を表す文学的タイトルの融合に至った。本作が20代日本男性である彼の日常から生まれた真摯な表現であることを思うと、世界有数の経済国でありながら、驚くほど男性中心の日本の現状がようやく変わっていくのではと感じた。今後さらなる展開が楽しみだ。

教授・笠原 恵実子