SENSE PRESERVATION

吉井 琴波

担当教員によるコメント

初期の頃のエスキースでもフードのある服を着た人が宙に浮いていた。本人は「宇宙飛行士」のイメージだという。テキスタイルで宇宙服というと化学繊維が思い浮かぶのだが、「素材は?」と聞くと「Wool」と屈託なく答える。つまり直接的な宇宙のイメージではない。日常の意識に浮遊している繊細な感覚をキャッチできる服?制作には特殊な縮絨技法が必要だった。Woolの種類の選別、糸の設定、織り組織と密度、糸染め加工、型整形のための型の制作、成型加工と服工程が重なり合い、出来上がった服の展示表現と作業が続く。これらの工程に突然現れる失敗の壁も自分で叩き壊して前進できる心の馬力があった。テキスタイルなのにテキスタイルだけでは終わらせない。吉井さんが持っている無限のSENCEが「宇宙」だったと後で気がついた。

教授・藤原 大