精神の表象

シンボルマーク

シンボルマークは、アイデンティティの視覚的表現である。多摩美術大学は創立以来、建学の精神と教旨を内外に伝えるため様々な標章を制定してきた。
1935年、設立時の校章は、図案科主任教授であった杉浦非水によるデザインである。同年10月末に完成した校舎の門扉は、青・緑・黄・赤のカラーサインが施され、日本画科を青、西洋画科緑、彫刻科黄、図案科(染織、建築を含む)を赤に区分されていた。西洋画実習棟の壁面には、建築家今井兼次教授の下絵による紋章のレリーフが取り付けられていた。このレリーフは多摩帝国美術学校の頭文字TTBと絵画芸術のシンボルである絵筆が交差し、上部には『芸術愛』を象徴するアカンサスが戴冠されている。
その後、新たなシンボルマークと校旗のデザインが杉浦非水の手によって考案された。シンボルマークは飛躍を意味する羽とUTAのロゴデザイン。校旗は日本画科にグリーン系、彫刻科イエロー系、図案科レッド系、西洋画科にブルー系があてられている。しかしこのプランは実現化しなかった。
4年制大学になった1953年には、杉浦非水デザインの『美』を基調にした校章が制定され、再建なった新校舎の正門に個性豊かなロゴタイプのレリーフが設置された。これは現在もそのままの姿で残っている。
創立60周年の1995年、伝統の継承と新たな目標に向けての創造的な意志を顕在化するUI(ユニバーシティ・アイデンティティ)計画が実施され、コンセプト・シンボルマーク・ロゴタイプ・スクールカラーを決定した。
コンセプトは『自由と意力』である。自由とは『本校創立ノ趣旨』の中にある。
「―美術ハ自由ナル精神ノ所産ナルコトヲ想フ時、我ガ美術教育界ノ缺陥ハ直ニコレヲ匡正スベキモノナリ―」
に依拠し、本学のなかに連綿と流れている校風である。意力は、杉浦非水の『圖案生活三十年の回顧』の
「―多摩帝國美術學校関係者の溌剌たる意氣を以て、私のこの意力を後世へ繼承する約束については誰一人として異存を稱へるものは無いであらうことを私は私の誇りとして信じ―」
の一文からである。意力は、本学に託された遺言なのである。
シンボルマークは、杉浦非水の羊の頭をシンボライズした校章『美』の原型を変容させている。上下二本のラインが『自由』と『意力』で、五十嵐威暢がデザインしたものである。
この1995年に制定されたコンセプト・シンボルマーク・ロゴデザインは、今後も常に我が国の芸術教育を牽引し続けようとする多摩美術大学の強い意志の表象である。学生、教職員、そして本学に連なる多くの人たちの精神の拠り所となり、誇りの支柱となって愛されることを希求するものである。