三つのポリシー 工芸学科
卒業認定・学位授与の方針
(ディプロマ・ポリシー)
情報化と多様化がますます進む現代社会にあって、工芸学科は、作り手と素材との根源的な関わりに立脚した、自律的な想像力を育む教育を主眼にしています。そして、その成果を世界に向けて、能動的にそして継続的に問いかけられる人材の育成を目指しています。そのために、工芸学科では工芸という言葉を柔軟で多様な広がりを持った単語として捉えています。工芸とは、「からだと技術」「感性と素材」の融和であり、ものを作り出そうとする意志と、それを可能にする技とが密接に結びついたものだと考えています。
工芸学科は、陶・ガラス・金属の三素材を扱うプログラムで構成されています。古来より人間はからだと道具を使い、これらの素材から多くのものを作り出しています。意図を持って素材を加工し、さまざまなものを生み出す営みは、時代を超えた普遍性を持っています。また、現代においても多様な造形の源であり、すべてのものを作る基礎となります。
これらの考えにもとづいた教育課程(カリキュラム)に沿って、技術と理論の双方から工芸を探求します。多摩美術大学の掲げる三つの能力である、観察する力と思考する力・構想する力と実行する力・創造する力と表現する力を踏まえ、「素材と対話する力と、からだで思考する力」「素材との関わりから構想する力と、作り上げる力」すなわち「ものを作る力と、もので表現する力」を身につけられた学生に、学士(芸術)の学位を授与します。
教育課程編成・実施の方針
(カリキュラム・ポリシー)
工芸学科は、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針にもとづき、教育課程(カリキュラム)を柔軟かつ有機的に編成・実施します。
1・2年次の基礎教育のうち、導入教育では、対象を多角的に見る態度と素材との向き合い方を学びます。また、すべての学生は、1年次に陶・ガラス・金属の課題をいずれも体験します。制作プロセスを通してそれぞれの素材の特質を学び、基本的な技術と理論を習得します。2年次以降は、各自の進む方向を見定め、陶・ガラス・金属のプログラムのいずれかを選択し、基礎を固めながら自らの関心に応じたテーマの発見を目指し、造形力を養います。プログラムごとに学ぶ内容は異なりますが、いずれも2年次をものを作り上げるための重要な時期と位置づけ、多くの課題に取り組みます。
3・4年次の応用教育のうち、3年次は、各素材の専門的な技術の応用力を身につけ、思考力を高めます。そして自らのテーマを深め、個々の表現を目指していきます。同時に他者とのコミュニケーションを学び、作品を社会に向けて発信する力を鍛えます。4年次は、自らの取り組むテーマを明確にし、制作理論と技術の統合を目指し、卒業制作に結実させます。
学修の成果を評価するにあたっては、あらかじめ明示した成績評価基準にもとづき、厳格な成績評価を行います。さらには、その結果を活用して、教育方法の改善につなげていきます。
入学者受入れの方針
(アドミッション・ポリシー)
素材からつくる力と作り出したもので表現する力は、多様な領域への応用につながる造形の源です。ものを作りたいと志向する誰もが、からだを動かして素材との関係を楽しんでいます。素材に対する強い興味を維持して作り続ける人は、柔軟な創意工夫ができます。このような皆さんを、工芸学科は積極的に受け入れたいと考えています。なぜなら、こうした資質は入学後、素材の特徴を制作の構想につなげようとする態度や、作りながら考えようとする欲求を生み出すからです。自ら作り出したもので発想を豊かに展開し、実作できるようになります。
入学試験では、集中して対象を観察し分析して見る視線と意識、素材を工夫して使う試みや、持続して制作に向き合える態度を評価します。さらには、基本は押さえつつも型通りではなく、自分らしさが表れていることを期待します。また、対話や論述によって論理的に考えを伝える力、展望を実現しようとする熱意や学業への意欲を、多様な試験の方法を用いて評価します。
ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーにもとづく教育内容が示すように、工芸学科は、素材との対話を通して自らのからだでものを作りたいと考える皆さんに広く開かれています。これから開花する皆さんの可能性に、工芸学科は伴走者の役割を努めます。