三つのポリシー 彫刻学科
卒業認定・学位授与の方針
(ディプロマ・ポリシー)
グローバル化にともない現代アートはもちろん彫刻の概念も拡張を続けるなか、世界でも稀に見る特異な文化遺産を持つ日本において、彫刻学科では伝統と革新を対立項とせず、歴史に学びかつ同時代的な表現の可能性を目指しながら、次世代を担う人材の育成を目指しています。
目まぐるしく変化する社会情勢にあって情報に翻弄されることなく、自己を取り巻く世界を真摯に見つめることは、美術を学ぶうえで重要であると考えます。彫刻はさまざまな物質を通して表現する領域であるため、生活のあらゆるメディアとの関係性や連携が可能な拡張的領域として捉えられる一方で、彫刻が歴史的に本来担ってきた造形芸術としての求心的な追求がなければ、彫刻表現の未来はありません。よってグローバルとは価値の統一ではなく、互いの価値を尊重し、地域の風土や歴史性に根差した表現の多様性を認め合うことと捉えます。
彫刻学科では、美術学部の教育研究上の目的に定める人材を育成するために、主体的で能動的な彫刻表現の自立性と可能性を目指し、時代に翻弄されない立体表現を目指します。「物質と形態」、「技術と思考」との関係性をさまざまな技術、理論を用いて多角的に実践し、造形表現の基礎「表現力・造形力」を身につけます。さらに、自らの方向性を課題ごとに模索しながら、「応用力・思考力」を身につけた学生に、学士(芸術)の学位を授与します。
教育課程編成・実施の方針
(カリキュラム・ポリシー)
彫刻学科では、ディプロマ・ポリシーで示した目標を学生が達成できるよう、以下の方針にもとづき、体系的に編成・実施します。
彫刻表現において、扱われる技術、知識は人類のあらゆる文化やその歴史性に根ざしているという前提に立ち、基礎教育を彫刻芸術における導入教育と位置づけます。
1・2年次の基礎教育では、「物質と形態」「技術と思考」という、造形表現の根幹となる関係性を軸に体験的に学びます。彫刻芸術における伝統的な素材や技法を用いて、基礎的な訓練や思考法を身につけます。さらに、同時代的な表現も視野に、自由素材を用いながら彫刻表現の拡張性も学びます。
3・4年次の応用教育では、基礎教育での体験をもとに自らの表現を深化、発展させるべく、課題ごとにテーマ、素材、表現方法に応じて自由に制作工房を選択し研究を進めます。多様かつ横断的な工房制作や複数教員による客観的な指導を通して、開かれた専門性と同時代的な表現を目指します。また、ギャラリーなどでの研究発表や課外ゼミにより表現の拡充を目指します。
4年後期では、各自のテーマをより高度に実現するため、培ってきた造形力、思考力を十分に発揮できるよう、表現方法、素材、工房選択など綿密に計画しながら卒業制作を行い、自立した表現を目指します。
学修の成果を評価するにあたっては、あらかじめ明示した成績評価基準にもとづき、厳格な成績評価を行います。さらには、その結果の活用を通じて、教育方法の改善につなげていきます。
入学者受入れの方針
(アドミッション・ポリシー)
彫刻学科では、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーにもとづく教育内容等を踏まえ、多様化するアートの分野において、造形する喜びに満ち、真摯に世界を見つめ自己と向き合うことのできる皆さんを受け入れたいと考えています。
グローバル化はアートの世界でも例外ではありません。とりわけ彫刻は立体であるがゆえ、あらゆるメディアとの接続が可能なジャンルとして無限の可能性を秘めていますが、一方では、情報化のなかで他者に伝えやすいメディアの影響を受けるという側面を持ち合わせています。彫刻学科では、このような観点から真に自立し、時代に翻弄されることのない表現と人材の育成を目指します。
そのためには、まず多様な価値観に根差した試験を実施し、受験生一人一人の個性が発揮できる自由度の高い設問により、技術や訓練だけにとらわれない、造形に対する強い意欲と集中力、そして個性的な感性の発見に努めます。彫刻はあらゆる知識や技術を応用して表現する芸術です。それには「柔軟な発想と応用力」、そして創造を実現する実行力が不可欠です。情報ばかりに敏感で周囲に気を取られていては、真に自立した作品は生まれようもありません。グローバルとは、価値の統一ではなく多様性の容認として捉えることで、個性的な表現者として世界に発信できると考えるからです。
モノよりコトが注目される時代性のなかで、なによりも造形する喜びに満ちた人を望みます。