上野毛キャンパスに新棟が誕生
新棟建設の目的
多摩美術大学は2025年に創立90周年を迎えるにあたり、多摩美術大学誕生の地である上野毛キャンパスに新棟(仮称)を建設します。
この目的は、単に老朽化や耐震の問題への対処にとどまりません。
アートが新しい世界像を具現化し人々の心を動かす。デザインが私たちの社会を望ましい状態に導く。これらを実現するためには、学生や教員が自身の創造性を育むことができる空間が必要となります。
学生の作品をはじめとした様々な創作物が展示される1階のギャラリーは、環状八号線沿いに面し、清々しく質実剛健な大屋根と天井高の高い空間は、地域住民の方々を迎え入れます。また、共同作業やコミュニケーションを促進する各階のスペースにおいては、アートやデザインの枠を超えた活発な交流がうまれます。
新棟概要
建設計画
- 完成予定 2026年度使用開始予定
- 所在地 東京都世田谷区上野毛3-15-34
- 敷地面積 15,878.32m2
- 延床面積 (本館)6,259.77m2 (講堂) 885.97m2
- 階数 地下1階・地上5階(本館)、地下1階・地上2階(講堂)
- 構造 鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造
- 設計・監理者 株式会社内藤廣建築設計事務所
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施工者 前田建設工業株式会社
※内容は一部変更される場合があります
建設に寄せて 多摩美術大学学長 内藤 廣
この建物の設計に取り掛かってしばらくして、青柳理事長からメモ書きをいただきました。
「雨露を凌ぎ、凍えることなく鉛筆が持て、熱中症の心配がない、そして友と師とがふれ合い、競い合い、絆を結ぶことのできる清朗な覆いさえあればいい」
これが設計に託された内容であり、この建物のコンセプトです。近年の建設費が高騰していますが、そんな中、質実剛健な建物を要望されたのだと理解しました。
まず、上野毛キャンパスの中心となる本館です。
特徴としては、仕上げは簡素ですが、その代わり教室などの天井を高くとっています。こうすれば、将来の転用もやりやすいし、冷暖房としてもゆとりのある空間になります。「凍えることなく鉛筆が持て、熱中症の心配がない」おおらかな空間になります。さらに、建物周囲にはバルコニーを廻らせています。これは、内部空間にゆとりをもたらすとともに、緊急時の避難にも役立ちます。
1階のギャラリーは、天井を高く取り、さまざまな利用ができるようになっています。ここは表通りである環状8号線に向けて開かれており、いわば上野毛キャンパスのショーケースのような空間になります。
最上階の5階は、執行部と事務関係が入りますが、一番眺めの良い中庭を望める空間には学生サロンを設けています。「友と師とがふれ合い、競い合い、絆を結ぶ」、そんな空間がここに出現します。そしてこの上に、「雨露を凌ぐ」「清朗な覆い」である建物全体を覆う大屋根が掛かっています。
次に講堂です。
ここは大きな交差点の角に面しています。通りかかる人や車から目に止まるような建物にしてほしい、これも理事長からのご要望です。お椀を伏せたような個性的な建物です。この屋根の下、学生たちが集い、演劇や音楽などの催しができる空間を作ります。ギャラリーが開放的なのとは対照的に、こちらは、守られ、包み込まれるような空間になります。
上野毛新棟は、多摩美術大学の未来に新しい刻印を刻む建物になると思っています。大学のモットーである「自由と意力」の旗印のもと、ここが新たな教育と文化創造の拠点になるはずです。