絵画学科版画専攻
学科・専攻の特色
本学版画専攻では、日本の版画教育の先駆けとして数多くの版画家、美術家、デザイナーたちを輩出し、「多摩美の版画」としての独自の教育を行ってきました。今日では伝統的な版画に留まらず、写真、CGなどの新しい版画表現へとその教育研究領域を拡げ、版画教育の先鋭的な拠点として位置し続けています。
版画専攻では、今日の多種多様な版画表現を研究するための3つの学びが設定されています。1つ目は木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンなど、東西で長い歴史をもつ伝統的な版画技法の研究、2つ目は写真、CGなどデジタルを中心とする版画や、版から展開される多様な表現(ミクスト・メディア、インスタレーション)などの先端的な表現の研究、そして3つ目は絵本、写真集などのブックアートや、グラフィックアート、イラストレーションなどを対象にした版画からデザインへの展開研究です。伝統と先端、アートとデザインの幅の広い領域を横断しながら、版画の今日的可能性を追求し、独自の視点で思考できる人の育成をめざしています。
選抜方針
総合型選抜では、一般選抜で評価しきれない「能動性」「広い視野と個性」をもった意欲的な人を求めます。新しい表現と出会いたいと思うこと、自分から動こうとする力が自立した表現者としての道筋になると考えています。そして作品と向き合っていくなかで培われていく思考力や持続力が自らの社会性を養うことになります。さらに、高等学校等とも教育的な連携を進めながら、真摯な姿勢で制作と向き合う個性豊かな人材の発掘をめざしています。
総合型選抜では、選択科目A/B、面接、小論文の三つを総合的に審査します。選択科目では、従来の基本的な描く力を評価する選択Aの科目「デッサン『静物』」とともに、多様な版画技法の一つである写真表現にかかわる力を審査する選択Bの科目「コラージュ『写真』」が設定されています。選択Bの科目「コラージュ『写真』」は、これまでの描画を中心とする造形表現とは異質の造形感覚を評価する課題で、写真を選択する感覚や、選択された写真から発想する力、それら写真を編集する力、そして画面に構成する力などを採点対象としています。
「面接」では、これまで制作した提出作品を前に何を考えて制作し、大学入学後どのような研究を行いたいのかを面談し、それを評価します。「小論文」では、大学における教養教育を修得するうえで必要な基礎力を幅広く有しているか、自身の考えを的確に文章として述べているか、版画に対する興味、関心の高さがテーマ設定、文脈からうかがえるかなどを評価していきます。
高等学校等で学習・経験しておいてほしいこと
美術館や博物館などに行って、多くの作品や作家に出会い、触れ合う機会をもつことを望みます。そして、ただ漠然と見るのではなく、どんな作品が好きか、美術の歴史はどうなのだろうか、どのような作家に興味をいだくかなど、問題意識をもって作品と向かい合い、自らの思考を深めてほしいと考えます。多くの作品を鑑賞することで“観る”力も備わってきます。そして、自分の言葉で人に伝えることを心がけてください。作品を読み解く力、考えを伝える力は、表現者としての基盤となっていきます。