彫刻学科
学科・専攻の特色
彫刻芸術は人類の歴史のなかでもっとも古い芸術のひとつであり現在もなお、私たちの遺伝子に脈々と引き継がれた美的表現のひとつとして、文明を多彩に彩っています。その彫刻をひとことで表現すれば「存在の芸術」と言えます。なぜならば、彫刻の材料となるさまざまな物質には宇宙の記憶が、そしてそれを加工する技術には人類の記憶が含まれているのです。よって現代において彫刻を創造することは、あらゆる文化や歴史に触れながら自らの意志を「かたち」に現す芸術と言えるからです。
彫刻芸術の概念は今も求心と拡張を繰り返しながら、さらなる可能性を求めて進化し続けています。そのなかで、私たちは世界に誇る特異で奇抜な伝統的美学を受け継いでいますが、この貴重な文化遺産を礎として、新たな彫刻表現の可能性を模索し世界に発信していかなければなりません。
彫刻学科では伝統と革新を対立項と見なさず、過去に学び未来を創造する我が国独自の芸術家の育成をめざしています。国内外でもトップクラスの設備を備え、塑造・木彫・石彫・金属・ミクストメディアの各領域における専門工房には経験豊かな教員が配属され伝統的な手法から拡張を続ける現代美術まで、基礎課程から学ぶことができます。そして専門課程では、学生自らがめざす領域を自由に選択しながら個々のもつ能力を最大限に発揮できる制作環境を整えています。
「彫刻を学ぶことはすべてを学ぶこと」です。本学科で培ったさまざまな経験は芸術家として、またいろいろな進路の礎となり社会に貢献できることでしょう。
選抜方針
彫刻概念が拡張を続ける現代において、大学入試も変えるべきものと、変えてはならないものがあると考えます。変えるべきものとは、相対的で多様な個性を画一的な基準ではかること。そして、変えてはならないものとは、創造する強い意欲と真摯な眼差しを汲み取る目です。よって実技試験「立体造形・デッサン」では、多様な解釈と自由な表現が可能な課題を課します。さらにこれまでの学びや制作活動が反映された「ポートフォリオ」と「小論文」「面接」によって受験生個々のもつ可能性と意欲を多角的に評価し選抜します。
高等学校等で学習・経験しておいてほしいこと
彫刻芸術の概念は進化し続けています。使用される素材も多様化し、身の回りにある物質すべてが彫刻の素材になるといっても過言ではありません。なぜならば、彫刻芸術は絵画芸術とは異なり、日々私たちが生活する時空間上に展開される表現だからです。木や土、石や鉄などの自然素材から現代社会におけるさまざまなメディアとも関わりながら「現在」を表現し、進化を続けている芸術なのです。よって、彫刻学科をめざす人は新たな視点で世界を見つめることが大切です。もちろん、デッサンや塑造など、時代を超えて普遍的な基礎訓練は必要ですが、何よりも今、自分にとって関心のあることをとことん探究することが、美術に対する固定概念を解放し、個性的な発想を導き、未来の「美」の扉を開くことにつながるでしょう。