発想力の高さを活かし、ニコニコのクリエイティブを支える
株式会社ドワンゴ
1997年設立。東京都中央区に本社を置くIT関連企業。日本最大級の動画サービス「ニコニコ」を中心とした多彩なウェブサービスのほか、イベント、クリエイターサポート、ゲーム、教育など幅広い事業を展開する。
2024年4月更新
ドワンゴのさまざまな事業を展開するうえで、デザインは大きな役割を担っている
高橋憲司さん
株式会社ドワンゴ
ニコニコサービス本部
デザインコミュニケーション室
室長
当社はエンターテインメント企業ですので、職種問わず社員一人ひとりのクリエイティビティを大事にしています。当社のサービスやプロダクトの大半は社内に在籍する約60名のデザイナーが手がけています。それぞれのデザイナーは専門領域を持ちながらも、スキルやキャリアに応じてロゴ、イラストなどのグラフィックデザインやTシャツ、ステッカーなどのグッズデザインなど携わる領域を広げていくことができますし、より上流工程への参画としてサービスの要件設定や構造設計、場合によっては戦略立案に関わってもらうこともあります。当社のさまざまな事業を展開するうえでデザインは大きな役割を担っていますし、我々デザイナーもその認識でいます。
多摩美出身のデザイナーは、点だけではなく、点と点を組み合わせて「線」として考える力が非常に高いという印象です。例えば、デザインのブレインストーミング(自由に意見を出し合うことで、新たな発想を生み出したり、アイデアを昇華させたりする会議手法)の際に、一つの視点だけでなくさらにその先を見据えて複数の視点を掛けあわせたような、皆がハッとするようなアイデアを出す場面を多く目にします。学生時代に培われた基礎力があってのことだと思いますが、その発想力の高さにいつも驚かされています。ニコニコのUI/UXを中心に臨機応変に活躍してもらっており、ありがたいですね。
なかでも森田さんは、入社1年目から「こういう仕事をやってみたい!」というチャレンジ精神が旺盛で、積極的に発言してくれています。森田さんに限らず「デザインが好き、アニメが好き、ニコニコが好き」という気持ちをアピールできることは、とても大切なこと。その気持ちを応援したいと思っています。
思考とアウトプットを交互に行き来するものづくりの手法は、多摩美の宮崎ゼミで培ったもの
森田七星さん
2022年|情報デザイン卒
株式会社ドワンゴ
ニコニコサービス本部
デザインコミュニケーション室
生放送デザインセクション
Webグループ デザイナー
就職活動のときは漠然と「IT系のUI/UXデザイナー」になりたいという思いがありました。子どもの頃からニコニコでボーカロイドなどを聞いていたり、学生時代には「ニコニコ美術館」など公式の生放送も好きで見ていたりしたので、サービス自体にも親近感がありました。UI/UXをはじめとしたデザインや、ユーザー同士あるいは運営サイドとのやり取りなど、人と人とのつながりの温かみを感じられるニコニコのサービス独特の雰囲気がすごく魅力的だと感じたことが、入社を志望する決め手となりました。
現在は「ニコニコ生放送(ニコ生)」のチームに所属し、UI/UXデザインやウェブサイトのデザイン、ノベルティの制作などをしています。ニコ生でアバターを使って配信する放送者のためにアバター用のTシャツをデザインしたり、「ニコ生ゲーム」のイベント特典のイラストをデザインしたりと、ドワンゴ独自のアウトプットも手がけています。
入社1年目の間に担当した中で、1番規模が大きい仕事もニコ生ゲームに関するUI/UXデザインです。放送者が生放送をしながら視聴者とブラウザ上で一緒に遊べるというもので、公式ゲームのほかにゲームクリエイターが自作ゲームを投稿して放送者や視聴者に遊んでもらうという文化があり、その投稿フォームの改修を実施しました。デザインをする前段階で、まずはクリエイターの皆さんの制作環境やスキルを知る必要があると思い、アンケート調査に取り組みました。その回答から投稿者のペルソナ(仮想ユーザー)を作成し、投稿者に寄り添ったデザインを考えました。とくに気をつけたのは「ユーザーが安心して投稿できること」です。例えば、ゲームのアップロード中にエラーが生じた際、どう表示すれば投稿者の不安を和らげ、原因を簡潔に分かりやすく伝えることができるかという点が難しく、苦心しました。その過程で「UXライティング」という考え方に出合い、ユーザーに届ける言葉の選び方次第でユーザー体験自体が大きく変わるため、より細部まで気をつけなければならないということを実感しました。
仕事をするうえで大切にしているのは、ユーザーの声に耳を傾けることです。良いコメントを積極的に発信してくださる方も多く、それが励みにもなっています。逆に、厳しいコメントにはドワンゴのサービスを好きだからこその熱量があり、改善すべき点をしっかりと受け止め、次につなげるようにしています。さまざまな業務をこなしていくなかで、ひとりではなくユーザーと一体となってものづくりをしているのだと体感するようになりました。
こうしたユーザー体験を考える基礎は、多摩美での学生時代に培われたものです。私が学んだ情報デザインコースは、アウトプットされた作品と同じくらい制作の過程も重要視されていました。所属していた宮崎光弘教授のゼミでは、自分のアイデアをすぐに作品化するのではなく、まずはプロトタイプをつくり、周囲の人たちに見てもらって客観的な意見を聞いたうえで再度思考し、さらにブラッシュアップを重ねるという、思考とアウトプットの両軸を交互に行き来するものづくりの手法を教わりました。自分が良いと思ったものをつくるだけでなく、他者との考え方の違いを意識して制作できるようになりました。このキャッチボールのような感覚はいまも自分の根幹にあります。また、学生時代にアウトプットのかたちを定めずいろいろな作品を制作できたこともよかったと思います。これまでに作ったことのないような案件も、楽しみながら取り組むことができています。
いま振り返ると、多摩美の充実した設備や環境のなかで、何の障害もなくものづくりに没頭できた時間は、すごく貴重で得難い経験でした。アウトプットがどういう結果であれ、突き詰めて何かを作りあげた経験によって自分の好きなものやスキルの方向性が定まっていくので、学生時代にはとにかく「手を動かしてみる」ということが重要なのではないかと思います。