企業の人事担当者・卒業生に聞く/コンサルティング

多摩美の学びのなかで体得するデザイン思考が、企業の課題解決に役立ち、新しい価値を生み出す

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

卒業生の赤星萌さん。東京・丸の内にあるデロイト トーマツ コンサルティング合同会社にて

デロイト トーマツ グループの一員として日本のコンサルティングサービスを担い、戦略の立案から実行までを一気通貫で支援する。5,000名超のコンサルタントが在籍。高い専門性、豊富な経験を武器とし、クライアントとともに経営課題や社会課題の解決に取り組む。

https://www2.deloitte.com/jp/ja.html

2024年4月掲載


在学中に身に付けた力で、ユーザー体験を高める優れたアイデアが生み出されている

大髙絵理さん
大髙絵理さん

造形表現学部映像演劇学科卒

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
Customer & Marketing
Creative Director

造形表現学部は現在募集を行っておりません

近年、「デザイン経営」という言葉が多くの企業で提唱されています。「デザイン経営」は、デザインの力を資源としてブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。企業収益向上や競争力強化につながるため、そのニーズは拡大しています。私たちのコンサルティングサービスでもデザイン経営の視点を取り入れることに注力しており、戦略立案などに活かし、ビジネスの変革を目指すクライアントの課題を解決する有効なソリューションのひとつと捉えています。

デザイン経営の本質でもある「ユーザー中心設計」という思想は、プロダクトやサービスを開発する際、技術を起点にするのではなく、ユーザーを中心に据えるのが特徴です。プロダクトやサービスを利用したときにユーザーが感じる使いやすさ、心地よさ、楽しさなどの体験を追求します。ユーザー体験を高めることがビジネス成功のカギを握っており、デジタル分野でいえばiPhoneなどを提供するApple社はその代表例といえます。そのような環境下で、私たちコンサルタントにも、デザイナーの手法や考え方に基づく「デザイン思考」が求められています。多摩美生をはじめ美大出身者が大学の学びのなかで体得するデザイン思考が、企業の課題解決に役立ち、ユーザーにとって新しい価値を生み出す武器になりつつあるわけです。

これまでに当社が担当させていただいた事例では、国内大手企業から若年層向け保険商材におけるマーケティング強化について、顧客戦略の立案および新規サービスの立ち上げの依頼を受け、ターゲットの選定やペルソナ(顧客モデル)の設定にはじまり、それに紐づくユーザー体験を高めるためのサービスデザインを定義。さらにプロトタイプ(試作品)を設計し、顧客検証を踏まえた改善を実施しました。このような依頼は特定の業界に限らず、多岐に渡る業界・業種の企業から多くの引き合いをいただいています。

多摩美の卒業生は当社にも多数在籍しており、それぞれ活躍しています。UX/UIに特化した私の所属チームは、半数が多摩美出身者です。多摩美生は皆、学生時代の興味や学びがいまの仕事に精通している印象を受けます。表現や、美術・デザインに関する知識や経験を根底に、ユーザー体験を高める優れたアイデアを生み出しています。また、何より楽しんで取り組んでいるところがいいですね。


現場でのデザインのニーズの高さは想像以上。大学で学んだことが社会に必要とされていることを確信

赤星萌さん
赤星萌さん

2022年|統合デザイン学科卒

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
エンタープライズテクノロジー・パフォーマンス
コンサルタント

現在入社2年目で、コンサルタントとして主にDX(デジタルトランスフォーメーション)の分野でクライアントの課題を解決する部署に所属しています。「多摩美でデザインを学んでいながら、なぜデザイナーではなくコンサルタントなの!?」 と思う方もいらっしゃるかもしれません。多摩美の統合デザイン学科では、プロダクトやUI/UXなどのデザインについて幅広く学ぶことができるのはもちろん、ブランディングや企画力、プロデュース力を養う授業もたくさんあり、当時から将来の進路の一つとしてコンサルタント職を意識していました。そのきっかけとなったのが、3年次に所属していた永井一史先生のゼミで、新しいもの/ことを生み出すという課題に取り組んだことです。コンセプトを組み立てるところからスタートするアプローチの仕方に面白さを感じ、デザインをもう少し広く捉えたいと思うようになりました。当時はコロナ禍で、授業がオンラインで少し時間にも余裕があったので、他大学の聴講生となり、気になった講義はどんどん受講するようにしていました。そのなかで、エンジニアの卵がデザイン思考を学ぶ講義に行き着き、技術者にもデザインの力が問われることを知り、クリエイティブ業界以外にも目が向くようになりました。

数ある業界の中からコンサルを選んだのは、デザインの思考法やスキルの需要が高そうだと感じたからです。統合デザイン学科での学びを生かして活躍できるチャンスがあるのではと思いました。実際に入社してみると、現場でのデザインのニーズの高さは想像していた以上でした。いろいろなプロジェクトを任されるなかで、上司から「デザイン的にどう思う?」などと聞かれることも少なくありません。デザインを学んだことが強みになっていますし、期待されるのはうれしいです。現在は官公庁の案件で社会課題を解決するプロジェクトに関わっており、とてもやりがいを感じています。

多摩美で学んだデザインの知識やスキルは、仕事の効率や成果を上げる場面でも役立っています。たとえば物事の「粒度(りゅうど)を揃える」ということがあるのですが、これを意識することで情報が整理され、ディスカッションやアイデアの質を上げ、最終的には課題解決につながっていきます。逆に、学生時代にもっとやっておけばよかったと思うのは、1・2年生のころから学外のコンペに積極的に応募しておけばよかったということです。社会とつながることで、デザインがいろんな業界で必要とされていることに、もっと早い段階で気が付くことができたかもしれません。

現在の仕事を通して、デザインが社会に必要とされているということは、私のなかで確信に変わりました。大学での学びを生かして活躍できるシーンはたくさんありますので、多摩美の後輩の皆さんにもぜひチャレンジしてほしいと思います。