常に変化し多様化しているゲーム業界。多摩美で培った基礎力が強みとなる
株式会社バンダイナムコスタジオ
家庭用ゲームソフト、モバイルコンテンツ、PCコンテンツなどの企画・開発・運営を行う。主な代表作は『鉄拳』シリーズ、『テイルズ オブ』シリーズ、『アイドルマスター』シリーズなど。
https://www.bandainamcostudios.com/
2024年6月更新
時代や地域により、どのようなコンテンツが受け入れられるか常に変化する業界
東 毅之さん
株式会社バンダイナムコスタジオ
アートマネージャー
VA(ビジュアルアーティスト)部門は、ゲーム内外に表示される、あらゆる要素をデザイン・制作する部署です。ゲームと一括りに言っても、多様化するユーザーニーズに合わせ、業務用ゲーム、家庭用ゲーム、モバイルのソーシャルゲーム、VRのように、その形は様々です。また、最先端技術を駆使したハイエンドなものや、実写のようにリアルな作品、アニメ調のものなど、作品の幅もどんどん広がっているのが、ゲーム業界全体の特徴です。
人気タイトル開発の監督役として多摩美の卒業生が活躍
『鉄拳』に携わっている木村君の他にも、『テイルズ オブ』シリーズのアートディレクター奥村大悟君のように、多くの多摩美卒業生が監督的立場で活躍しています。各シリーズは期間が長いので担当も入れ替わっていくのですが、その間当然CGの技術も向上し、求められる技術の内容自体が変わっていくので、バージョンごとに高いレベルや技術トレンドを取り入れる必要があります。そのためゲーム業界の人間は常に勉強し続けなければならないのですが、そこにはベースとなる基礎力が活きてきます。いくらでも応用が利きますからね。そこが多摩美の強みではないでしょうか。
例えば彫刻など幅広い分野での学びが生かせる
『鉄拳』シリーズは、今やワールドワイドに展開し、現在は海外の方が伸びています。業界全体に言えることですが、国内市場はモバイル中心でも、海外はPCや家庭用が主流です。また、動画配信などによりコンテンツが思わぬ広がりを見せることもあります。時代や地域により、どのようなコンテンツが受け入れられるかは、常に変化しています。
これからゲーム業界を目指す人に期待することは、ツールを使いこなせるなど技術に長けた人は即戦力にはなれますが、それだけではだめで、一つに固執するのではなく柔軟性があり、変化に対応できる準備ができているか、応用が利く基礎力があるかということです。例えば、近年ではスカルプティングという3Dモデルを画面上で彫刻のように作りあげていく技術が主流となっていて、これは感覚的にアナログ表現に近い。彫刻などを専攻している学生には向いているのではないでしょうか。油画やデザインに限らず、幅広い分野での学びが生かせる業界だと思います。
モバイルアプリ『鉄拳』をバンクーバー支社と協働開発。
日本側のアートディレクターを務める
木村 憲司さん
1997年|油画卒
株式会社バンダイナムコスタジオ
リードアーティスト
子どもの頃からナムコのゲームが好きで、『ワルキューレの伝説』等のデザインを手掛けられた冨士宏さんに憧れて美術系の進路を選び、今に至ります。3D格闘ゲーム『鉄拳』の歴代タイトルに参加し、現在はキャラクターCG制作やアートディレクターを務めています。プロジェクトは、キャラ、背景、エフェクト他、専門パートで分かれているのですが、その全体のテイストやクオリティに責任を持つのが私の仕事です。
ベースがあればその応用で “料理” できる
多摩美で培った基礎力は今も開発現場で生きていると感じていて、制作物や手法は変わっても、ベースにはまず基礎力があり、その応用で “料理する” という感じですね。また、私は学生時代、具象画を描いていたのですが、周囲の抽象画や立体クラスの仲間達から、美術の多様な表現や考え方を吸収できたことも良かったです。広い思考を持った人たちに触れ、様々な価値観があることを知り、それを理解しようとする心を養えました。それは今ディレクターとして監修したりアドバイスをする中で、大きな力となっています。
ワールドワイドな視点をもって海外の制作会社と協働
私たちの仕事は、さまざまな個性のスタッフが1つのゴールに向かって、多くのお客さまに伝わる製品にまで仕上げるチーム制作ですので、柔軟な思考やコミュニケーション力が求められます。そしてゲーム業界は技術革新、変化が激しい世界です。近年は海外の制作会社や支社と協働する機会も増えていて、よりワールドワイドな視点や理解力が必要です。独りよがりなものではビジネスになりません。自分が良いと思ったものを、みんなが理解できる形に構成し、さらに面白いゲームとして売れる作品に仕上げるためには、柔軟な視点とジャンルを問わない幅広い知識が生きてきます。前向きに向上心を持って、若い頃は何でも観て聴いて体験して、表現の引き出しを増やしておくと良いですね。