デザインはソニーの資源。多くの多摩美出身者が支えています。
ソニー株式会社
日本を代表する電機メーカー。ソニーグループを統括する事業持株会社。世界首位のCMOSイメージセンサーやゲームなどのエレクトロニクス分野をはじめ、映画・音楽分野にも重点を置く。
www.sony.co.jp/design/
2017年11月掲載
多くの先生が一線級の経験者であることは大きかった。
詫摩 智朗さん
ソニー株式会社 クリエイティブセンター スタジオ2 チーフアートディレクター
1990年|プロダクトデザイン卒
現在はチーフアートディレクターという立場で、ウォークマンやヘッドホン、スピーカーなどオーディオ製品全体について、誰に向けてどんなものを作るのか、デザインの方向づけを行うことが主な役割です。さらに、個々の製品だけでなく、大きな視点で「ソニーらしさとは」という点でのディレクションも行っています。
多摩美での学びにおいては、多くの先生が、家電メーカーや自動車業界などの一線級の経験者であることは大きかったです。社会のトップレベルの基準が身近にある。このレベルに近づければ、社会に出ても何も心配がない。そういう環境は貴重でした。それに授業での同級生との競争もすごく勉強になりました。まわりには知見、手技共にすごい人たちばかりで、自分が敵わない部分を見せつけられました。そこで考えたのが、すでにある分野で勝ち目がないなら、新しい分野で勝負していこうということでした。今も根強く残っている、新しいことにチャレンジしたいという姿勢は、この時に育まれたのかもしれません。ほかにも、トライ&エラーの習慣や細部への作り込みというのは、多摩美の伝統だと思います。学生の作品集を見ても多摩美生のクオリティは高い。それは、「ある程度のクオリティに仕上げなければ成果として出さない」という感覚があるからでしょうね。
勉強が嫌いだからという逃げの理由でデザイナーになれることは絶対にあり得ません。多方面の知識、語学も含めたコミュニケーション能力、プレゼンテーションには論理的な思考が必要です。ひとつのことを掘り下げて考えることも大事、かと言って他が疎かになるのもいけない。学生時代は、幅広く様々なことを学んでほしいと思います。
実践的な学びと企業との共同研究。
社会と同じレベルで鍛えられました。
杉山 直樹さん
2002年|プロダクトデザイン卒
ソニー株式会社 クリエイティブセンター
スタジオ2 デザイナー
現在、私は、ワイヤレススピーカーと中南米向けの大型オーディオの2つのカテゴリーを扱うチームに在籍しています。
学生時代を振り返り、今に生きていると感じることは、ものを作る時の「考え方」です。課題はコンセプトの立案から与えられるのですが、課題に適した斬新なコンセプトをうまく形に表現できていると高く評価されます。その一連のプロセスを徹底して学びましたが、これは社会に出ても同じです。「コンセプトありきの造形」、そういった意識を多摩美生は強く持っているのではないでしょうか。それを顕著に感じたのは、ソニーの就職試験です。他大学と多摩美の学生数名で試験を受けましたが、多摩美生の場合は客観性を備えた独自のコンセプトの立案から、それを理にかなった造形に落とし込む造形力まで、製品として通用するレベルの提案ができていると感じました。
そして、社会での即戦力的な力を得られた理由には、現役で活躍されている先生方の日々の厳しいご指導が挙げられます。締切時間の厳守。プレゼンに間に合わないと評価は一切つきませんし、ソニーご出身の安次富先生も、「何やってもいいんだよ」とおっしゃるのに、一定のクオリティに到達しないと非常に厳しかった(笑)。また、3年生から始まる産学官共同研究も貴重な経験でした。私は、松下電器産業(現・パナソニック)など4社もの企業を経験させていただきました。構造、素材、製造方法などにも踏み込んでいくのですが、これは他大学ではなかなか得ることのできない経験ではないでしょうか。