企業の人事担当者・卒業生に聞く/建築・インテリア・ランドスケープ

多摩美出身者は創造性に加えて、マネジメントにも長けている

株式会社イリア

写真左から人事担当の下野敦史さん、卒業生の黒田舞さん。東京・港区のイリア本社にて

鹿島建設のグループ会社として1985年に設立。国内外のホテルや国内オフィスを中心にさまざまな建物のインテリア業務を担う。インテリア業界のリーディングカンパニーとして、企画からデザイン、設計・施工、家具備品調達、コンサルティングも行う。「Total Design Solutions」を実現させ、社会生活の向上を目指す。
https://www.ilya.co.jp/

2024年6月更新


一緒に働いていると随所で伝わってくる
「プロ意識の高さ」

下野敦史さん
下野敦史さん

株式会社イリア
取締役 執行役員
経営管理部門長

当社は、高いグレードを求められるオフィスやホテルに多くの実績があり、オフィスでは働き方のコンサルティングからデザイン、施工、家具の調達までを一貫して行っていること、ホテルでは高度な専門知識と豊富な実績をふまえたコンサルタントとデザイナーが協働している点などが会社の特徴として挙げられます。近年は働き方改革の浸透やコロナ禍を経たオフィスマーケットの変化への対応、インバウンド効果による大型ホテル案件の増加など、当社事業に対するニーズが高まっていると感じます。昨年度から人材育成と3部門(デザイン、施工、家具調達)間の連携促進を企図して、自社保養所のリニューアルやサテライトオフィスの開設を、部門をまたいだ若手社員が協働して取り組むプロジェクトとして創出していますが、このような機会を通じてお互いの状況や立場を理解することで、顧客に訴求するシナジーが生まれるのではないかと考えています。

多摩美出身者は、執行役員を含め約20名が在籍しています。職種としてはインテリアデザイナーが最も多いですが、グラフィックデザイナーやオフィスコンサルタント、照明エンジニアとして活躍している方もいます。一緒に仕事をするなかで実感しているのは、多摩美出身者は創造性に加えて、コスト管理を含むマネジメントにも長けているということです。予算やリソースが限られているなかで、顧客のニーズに的確に対応すること、また全体を俯瞰したコミュニケーションを意識されている方が多いと感じます。そうしたデザインに付帯する業務もしっかりこなすことに加えて、周囲への気遣いや配慮ができる点は、多摩美出身者の長所だと感じており、一言でいうなら「プロ意識の高さ」が一緒に働いていると随所で伝わってきます。

今後はますますスピード感や総合力が問われる時代になるでしょう。そうしたなかで、デザイナーがマネジメントの視点を持っていることは、当社が更に事業を発展させるにあたって支えになってくれるだろうと期待しています。


多摩美で自由に課題に取り組めたことで、視野を広く持ち思考をデザインに落とし込む表現力を身に着けた

黒田舞さん
黒田舞さん

2017年|環境デザイン(現 建築・環境デザイン)卒

株式会社イリア
インテリアデザイン部
デザイナー

ホテルやレジデンス、オフィスのインテリアデザイン(内装設計)を中心とした業務を担当しています。入社1年目でホテル雅叙園東京の改修を手がけ、最近の案件でグアムの新築ホテル「The Tsubaki Tower」、「Hilton Guam Resort&Spa」、横浜ベイシェラトンホテル&タワーズの和食レストラン「木の花」の改修等に携わりました。クライアントやその施設を利用するお客様に喜んでいただくことが何にも代えがたいやりがいと喜びとなっています。また、たくさんの関係者とコミュニケーションを図って完成させるその過程も、仕事をするうえでのモチベーションになっています。自分のデザインが具現化され、皆で作り上げた空間がこの先何十年も残っていくこの仕事には「夢があるな」と感じています。 

私の在籍していた当時の環境デザイン学科では年間5課題のうち、毎回「建築」「インテリア」「ランドスケープ」の3つの分野から選ぶことができたのですが、私はその時々で関心のあった課題を選んで取り組んでいました。どの分野であっても「どうしたら人や社会の役に立てるのか」ということを深く考え、コンセプトを立ててデザインすることを大切に取り組み、その面白さ、楽しさに気づく時間でした。その中で、モノだけで無くコトにも付加価値をつけるデザインをしていきたいと考えるようになり、より人に近くソフト面もハード面も提案できるインテリアデザインを仕事にしていきたいと思い、この道を選びました。 

実際は課題に対して点数がつけられるので、大学生活はシビアなものでもありましたが、自分の思考をデザインに落とし込んで表現し、そのデザインの思いを相手に伝えるというデザイナーとしての力が鍛えられました。業界の一線で活躍する先生方のいる環境、リスペクトし合える友達と切磋琢磨する時間は人生の財産であり、確実に今の自分の基礎になっています。 

美術の道は(学生時代は特に)いつも楽しさと辛さが、濃淡をもって入り混じっていると感じます。でも何より自分が色んな経験をして、見て、触れて、感じて、人生を楽しむ延長にクリエイティブ、デザインのアウトプットがあるなと大人になって改めて思います。「こうじゃなきゃ」と自分の可能性を狭めず、いろんな視野を持って、発見を楽しんでいく。クリエイティブって終わりがないんだと思います。多摩美で先生からいただいた「デザイナーとして自分の現状に満足してはいけない」という言葉は、今も私の道標になっています。これからも常にアップデートし、自分自身を磨いてより良いデザインを提案できるよう頑張っていこうと思います。