企業の人事担当者・卒業生に聞く/宣伝・広報

在籍する約40人の多摩美生は、各プロジェクトにおいて大きな影響を与えてくれる存在

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ

写真左から卒業生の小暮菜月さん、渡辺光さん。東京・港区の博報堂本社にて

生活者発想を活かしたクリエイティビティで、社会に新たな価値を生み出す広告会社。制作部門に強く、多数の世界的受賞作品ほか著名クリエイターを輩出する。
https://www.hakuhodo.co.jp/

2024年6月更新


課題を捉えてアイデアを生み出し、
それをプロジェクトとして推進する

村田博彰さん
村田博彰さん

株式会社博報堂
MDU 事業経営企画室 人事マネジメント2グループ
アートディレクター

広告会社というと「CMを制作する会社」というイメージがまず思い浮かぶ方も多いと思います。しかし今の時代、博報堂の仕事の領域は大きく広がっています。例えば社会課題にも積極的に向き合うことや、クライアントの事業を推進するための事業課題にも関わっております。そうした社会や企業が持つさまざまな課題を広義な意味でのデザインの力で解決するのが、当社の特徴でもあると同時に積極的に取り組んでいます。当社では現在、約40人の多摩美の卒業生が在籍しており、コミュニケーション領域をはじめ商品開発やサービス開発など、さまざまな領域で活躍しています。各プロジェクトの課題解決において大きな影響を与えてくれる存在です。又、過去をさかのぼれば、多摩美から博報堂を経て、現在も第一線で活躍されているクリエイターのなかには、著名な方々が大勢いらっしゃいます。「多摩美から博報堂」という流れには、歴史と実績があります。

採用活動時に多摩美の学生さんと直接話してみて思うのは、アウトプットのデザイン力だけでなく思考力もしっかり身につけているということです。ともすると美大生は <モノを作る=実装> の部分に向きがちですが、我々が求めるクリエイターはそうではありません。課題を捉えてアイデアを生み出し、それをプロジェクトとして推進していくことのできる力を持つ人材を「クリエイター」と呼んでいます。『CREATIVITY・HAKUHODO』という会社のスローガンが示す通り、当社では、デザイナーもそれ以外の職種も含め「社員全員がクリエイティビティを持つ」という方針です。多摩美の卒業生は高いクリエイティブ資質を備えており、今後も当社や広告業界を支える人材として大きな期待を寄せています。


クライアントとの商品開発やプロモーションの企画立案など
「世の中の人々に気づいてもらうには、どうすればいいか?」を考える

小暮菜月さん
小暮菜月さん

2012年|グラフィックデザイン卒

株式会社博報堂
クリエイティブ局坂本チーム
アートディレクター

クライアントとの広告制作、商品開発やプロモーションの企画立案、コンテンツ制作など、さまざまな案件に携わっています。業務内容は幅広いですが、共通するのは「世の中の人々に気づいてもらうには、どうすればいいか?」というコミュニケーションの部分を考えることです。

たとえば、2022年に販売されたキャンディの新商品開発では、「Z世代のアメ離れ」という課題があり、「Z世代にもっとアメを楽しんでもらうにはどうしたらいいか?」ということを、企画段階からメーカーやショップの方々と一緒に考えていきました。「Z世代にとってアメは退屈」という発見のもと、味に飽きずに楽しんでもらいたいという思いから、架空に制作した歌詞に沿って味が感情のように変化するアメ「EMOTIONAL CANDY(エモーショナルキャンディ)」を開発しました。パッケージデザインも音楽プレイヤーをイメージして、SNSにアップしたくなるようなビジュアルにしたところ、「エモいアメ」として話題になりました。

自分が作ったもので、世の中の人たちが反応してくれることが、私にとってモチベーションになっています。振り返ると子どものころから、私が描いた絵を見て、友達が喜んでくれるのが好きでした。多摩美に入ったのも、絵を描くことで世の中に影響を与えたいという思いがあったからです。

ただ、学生時代は落ち込むことも少なくありませんでした。まわりの友達と比べて、自分には特出するものがないと感じていたんです。でも、日々悩みながら自分と向き合って課題をこなし、制作の経験を積んだことで、最後までやりきる力と、物事を広く深く考えるという思考力が、自分でも知らないうちに身についていました。それが今、仕事をするうえで大きな武器になっています。

多摩美の環境は特別です。かつての私と同じように、自分には何もないと落ち込んでいる人がいたら、今やるべきこと、やりたいことと向き合って、とことん自分を愛してほしいです。社会に出たとき、その経験に助けられるときがきっと来ると思います。


在学中にトライアンドエラーを繰り返したおかげで、
「体験者がどう動くか・どう感じるか」という思考力が鍛えられた

渡辺 光さん
渡辺 光さん

2019年|統合デザイン卒

TBWA\HAKUHODO Innovation Hub所属
エクスペリエンスプラナー

TBWA\HAKUHODO = 博報堂とTBWAワールドワイドのジョイントベンチャーとして設立された総合広告会社。渡辺さんは2022年より博報堂から出向中。

私が今在籍しているInnovation Hubは、テクノロジーを活用したプロダクト開発やサービス開発をクライアントと取り組むために、TBWA\HAKUHODO内に新設された組織です。直近では日産自動車株式会社と株式会社赤ちゃん本舗の協業プロジェクトに携わり、「INTELLIGENT PUPPET イルヨ」という運転中の子守り支援ロボットのコンセプトモデルを開発しました。赤ちゃんとドライブする際、運転中のママ・パパは、後部座席の赤ちゃんの様子が見えません。その不安を解消するのが、イルヨです。イルヨが運転席のママ・パパの声に合わせて、チャイルドシートに座る赤ちゃんを、「いないいない、ばあ」などの動きであやしてくれます。

プラナーの仕事は、企画のアイデア出しからウェブサイト制作、コピー開発など本当に多岐に渡ります。イルヨを例にお話しすると、ウェブサイトは日産自動車と赤ちゃん本舗の本気が伝わるようにプロモーションサイトではなくプロダクトサイトのような見え方にしたり、ネーミングにはママ・パパが「いるよ」と話しかけて寄り添う気持ちを込めたりと、様々な工夫を凝らしています。

イルヨのみならず常に意識をしているのは、「体験者がどう動くか・どう感じるか」ということです。体験者視点に立つことの重要性は、多摩美時代に学んだことの一つです。在学当時は、プログラミングを活用した実際に触れて体験できる作品を制作することが多かったのですが、常に体験者が私の意図する通りに行動するとは限らず、何度も失敗を繰り返しました。でもこのトライアンドエラーのおかげで、「体験者がどう動くか・どう感じるか」という思考力が鍛えられました。

今の私を方向づけてくれたのは、中村勇吾教授の「多摩美で学んだことを活かせるのはデザイナーだけではない」という言葉です。グラフィックデザインを極め、デザイナーとして活躍する諸先輩方や同期たちがいるなかで、私は「体験デザイン」で世の中に還元したいと考えています。進路に悩む後輩たちにも、多摩美で学んだことを活かせる場所はたくさんあるということを、ぜひ知ってもらいたいですね。