短編アニメーションで米国アカデミー賞受賞ほか、映画やテレビCM制作でも活躍
株式会社ロボット
1986年に広告企画会社としてスタートしたROBOT COMMUNICATIONS INC. (以下ROBOT)は、広告から、劇場映画、アニメーション、デジタルコンテンツ、キャラクター開発などへフィールドを広げてきました。近年ではXRライドなど体験型コンテンツも数多く手がけています。
https://www.robot.co.jp/
2024年6月更新
「伝えること」の大切さを、クリエイティブに生かす
石毛 達也さん
株式会社ロボット
執行役員 経営本部副本部長
管理部部長
ロボットと多摩美との関係は深く、アニメーション作家で多摩美のグラフィックデザイン学科教授でもある野村辰寿氏や『つみきのいえ』で、第81回アカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した加藤久仁生氏が所属していました。現在は複数名の卒業生がクリエイティブ人員として活躍しています。クリエイティブ部門は美大のなかでも多摩美出身者の比率が非常に高く、ディレクターやプランナーとして卒業生が活躍しています。
採用において学歴や経験は一切不問としているように、当社が重視するのは、しっかりとしたものづくりへの思いです。将来への具体的な夢を持ち、それに向かってどんな経験を積むべきかを考え、さらにその思いを相手に伝えられる人を求めています。当社はメジャーな映画を数多く手掛けているため、興味を持ってくれる方は大勢います。ですが、この「思い」の部分には明確な差が表れるもので、多摩美の卒業生は相手に何かを伝えたいという「思い」が強い印象がありますね。
例えば、多摩美の映像演劇学科(現在募集停止)の卒業生のディレクターがいます。彼は、ロボットが制作した映画を観てロボットを知り、映画・映像での活躍を夢見て多摩美に入学しました。そして入社後の現在は様々な分野でクリエイティブに関わっており、ディレクターとして次々と映像表現の幅を広げています。その道を目指すきっかけは映画でしたが、映像で表現できること、伝えたいことを追求した結果、自分なりの道を切り開いた好事例だと思います。
現在、働き方改革でクリエイティビティと効率化とのバランスが大きな課題となっています。そんな時代だからこそ、クリエイティブだけではなく世相を捉え俯瞰でも物事を見る目が必要で、一歩先を読む力が求められます。ロボットには、勤続三年以上の社員が新しいキャリアにチャレンジするために、他部門への異動希望を出すことができる「キャリアチャレンジ制度」があるなど、ものづくりを支える土台ができています。自分の目標のためにここで何かを成し遂げようという人は、たとえロボットを卒業しても、同じ業界で共に良いものづくりを追求していける。私たちは、そんな仲間を求めています。
感度の高い多摩美の友人たちが作品を見てどう思うかが、
いまだに一つの基準になっている
森清 和浩さん
2003年|芸術学科卒
株式会社ロボット
クリエイティブ・マネジメント室
企画/演出
CMディレクターは、クライアントからオファーを受けてから、それを映像に落とし込むまでの一連の作業を担当します。絵コンテの作成や、必要なスタッフの手配、ロケハンといった事前準備はもちろんのこと、撮影時の演出、撮った映像の編集から仕上げまで、すべての工程に関わるイメージです。
制作過程のどこを山場とするかはディレクターによって違うと思いますが、私の場合は、最初に企画を見る瞬間です。ファーストインプレッションで「これはイケる」と思えるかどうかが、その後の制作にも大きく関わります。なので、企画に目を通すときは、必ずコンディションを整えるようにしています。
もともと私は、CMにまったく興味がありませんでした。それどころか、CMは映像作品ではないとまで思っていたんです。でも、就職活動をしているときに、所属していたサッカー部の先輩から「お前はCMディレクターに向いていると思う」と言われて、軽い気持ちでロボットを受けたところ、奇跡的に採用されました。後々聞いた話では、その年の採用では、今までいなかったタイプの人材を採ろうという目的があったそうです。自分で言うのもなんですが、学生時代の私は、今では口にできないような奇抜な自主映画を撮っていました。普通なら絶対採用されない人材だったと思うので、本当に就職は縁だなと感じます。
ただ、こういう経緯で今の仕事に就いたので、CMを好きになるまでに3年くらいかかってしまいました。3年経ってようやく師匠から「もう教えることはない」と言ってもらったときは嬉しかったですね。CM制作が好きだと、はじめて思えた瞬間でした。
私がCMを作るときは、卒業後もずっと連絡を取り合っている多摩美の友人たちがこれを見たらどう思うかが、いまだに一つの基準になっています。多摩美生は感度が高いので、普通の作品では納得しません。だからこそ、どうやって彼らを感動させてやろうかという気持ちが、創作の原点になっています。
僕らの時代は皆、好きなものを好きなだけ作っていました。楽しいという理由だけで作っていたものが、たまたまその後に繋がったという人も多いです。そういう人が今、売れっ子になっている気がしますね。私自身、多摩美が自由を与えてくれたから、充実した学生生活を送ることが出来ました。ただ、ちょっと楽しみすぎたかもしれません。学生時代を満喫しすぎると、社会に出たときにエンジンがかかりにくいんです。学生時代に何かしらの不満を抱えていた人は、仕事で取り戻してやるという気持ちがものすごく強い。新卒の頃、そういう人たちのトップスピードを肌で感じました。だから、満喫するのもほどほどに。と言いたいところですが、やっぱり学生時代のかけがえのない時間も、しっかり楽しんでほしいです。