企業の人事担当者・卒業生に聞く/建築・インテリア・ランドスケープ

建築プロジェクト全体の旗振り役として、事業そのものをデザインする

日建設計コンストラクトション・マネジメント株式会社

卒業生の榎本さんが建築プロジェクトに携わった武田グローバル本社。クリエイティブディレクター佐藤可士和さんとの協働プロジェクト。CM選奨最優秀賞/日経ニューオフィス賞/A’Design awardなど多数受賞。写真は「生きる力」をコンセプトとしたアートワークのある4階のスカイロビー。

都市の再開発をはじめ、国内外における建築プロジェクトの企画・計画段階から設計・工事段階、運用まで、総合的なマネジメントを実施。近年では、武田グローバル本社、四国水族館、神戸ポートミュージアム、中京テレビ放送本社、日本橋三越本店屋上リノベーションなど、多くのプロジェクトを成功に導く。
https://www.nikken-cm.com/

2024年7月更新


佐藤可士和さんとの多摩美卒業生コンビによる
建築プロジェクトで、国内外のデザイン賞を多数受賞

榎本拓幸さん
榎本拓幸さん

1999年|建築卒 ※現 建築・環境デザイン学科

日建設計コンストラクトション・マネジメント株式会社
マネジメント・コンサルティング部門
シニアディレクター

建築プロジェクト全体の旗振り役として、デザイン、品質、コスト、スケジュール、リスク管理までをトータルでマネジメントするのが私の仕事であり役割です。事業主の要望を踏まえ、よりよいかたちを目指し、事業そのものをデザインします。もともとは建築設計の職種で入社しましたが、プロジェクトを仕切るポジションに興味を持ち、10年目に希望して異動しました。建築の設計やデザインにとどまらず、新築の企画段階から古くなった建築のリノベーションまで幅広く業務に関われることがこの仕事の魅力です。

中京テレビ本社の建築プロジェクトはチームビルディングからスタートし、クライアント内部の社内調整をはじめ、関連するデザイナーや設計者、その他多くの技術者が意見を言い合える環境づくりに取り組みました。プロジェクトマネジャーが完成のイメージを一番クリアに持っていないと、クライアントや設計者の思い描く建築物に昇華できないからです。そのために関係者とのコミュニケーション・ハブを担うことが大切になります。このプロジェクトのように数千人の関係者、数百億単位の資金、長期の期間を要するケースは珍しくなく、無事成功したときの達成感は非常に大きいですね。

武田グローバル本社の建築プロジェクトは、多摩美出身のクリエイティブディレクター・佐藤可士和さん(グラフィックデザイン学科客員教授)との協働プロジェクトでした。可士和さんが思い描くデザインと建築をいかに融合させるか。単純に足し算で思考するのではなく、掛け算のアウトプットを意識して臨んだことが、国内外のデザイン賞を多数受賞させていただく評価につながっているのだと思います。

不透明かつ多様な時代、新しい体験や思考の創出を含め、
デザインのニーズは高まるばかり

多摩美時代は、毎日のように先生や友人と作品について意見を交わし合っていました。エキサイトし過ぎて夜遅くなり、学校を追い出される日もよくありました(笑)。そういった経験がいまの私の仕事に非常に役立っています。建築の世界ではただ作りたいものをつくるわけにはいかず、クライアントや社会的なニーズに応えていかなければなりません。ニーズを踏まえて関係者とコミュニケーションを取り、プロジェクトを成し遂げるまでマネジメントするのが私の役目です。当時、多摩美の教授や同級生に対して、自らの作品の魅力や必要性などを論理的に説明することを繰り返しました。多摩美での緊張感あふれる授業、本気の講評を積み重ねたおかげで、高いレベルのプレゼンテーション能力が養われました。それが社会に出て大きな武器になっていると感じています。

仕事で関わる社内の多摩美出身者には、ひとつの物事を突き詰めることに長けているのを感じます。私と同じく講評会で多数の先生や同級生から指摘を受け、もまれ、時にはケンカしながら鍛え上げられた結果なのでしょう。また、一般的な大学のテストでは、わからない問題は空白でも合格点が取れていればOKですが、多摩美の場合、課題を仕上げて「空欄のない回答」を作り上げなければ卒業することはできません。暗記力などではどうにもならない課題に対してとことん向き合い、アウトプットをひねり出す4年間を過ごしてきたはずです。そのため、ビジネスにおいても「これでいいや」という人は少なく、問題提起して本質を突き詰められる人が多い。こうした力を持っているので価値ある仕事を続けられるのだと思います。

建築設計やプロジェクトマネジメントの業界では、構造設計や設備設計などの分野に関わる人のほとんどは理工系大出身者で、美大出身者はクリエイティブな分野、いわゆるゼロイチの仕事に関わることが多いです。これは単に新しいデザインを意味するだけでなく、新しい体験や思考の創出も含まれています。不透明かつ多様な時代にはそのニーズは高まるばかりで、美大出身者には多くのチャンスが巡ってくるのではないかと考えています。

理系から多摩美に進学し、
初めて学ぶことの楽しさを知った

私は高校を卒業するまで勉強が大嫌いでした。高3のときにやっと勉強のスイッチが入り、美大の建築デザインを志して、理系から多摩美を選択しました。多摩美に入学して初めて学ぶことの楽しさを知り、一番勉強に時間を費やしたのが大学時代です。いま振り返ると、10代後半から20代前半の多感な時期に美術・芸術を学び、自己表現のスキルとして会得できた価値は大きいです。美術・芸術を通じて自分を表現する術を持てたからこそ、社会に出てからの成長に拍車がかかっていったと思います。

自分を表現して周囲に認められることで人は成長するのでしょう。私の経験上、社会人として必要な最もコアなスキルを習得できたのが多摩美だったと痛感しています。また、勉強が嫌いな人ほど、学ぶことの必要性を自ら感じられる場所でもあります。後輩や高校生の皆さんには、そのことをぜひ知ってほしいですね。