多摩美の学生は、学生時代から物事に対する柔軟な思考力とチャレンジ精神を身につけている
株式会社サイバーエージェント
"21世紀を代表する会社を創る"をビジョンに掲げ、メディア事業・インターネット広告事業・ゲーム事業の3つを主軸に、インターネット産業の変化に合わせて新規事業を生み出しながら事業拡大を続けている。運営するサービスは多岐に渡るが、新しい未来のテレビ「ABEMA」は、2500万MAUを突破し、「Ameba」は2024年9月15日にサービス開始20周年を迎える。
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2024年7月更新
事業の成功確度を上げるためには、クリエイターの持つ「思考し続ける力」「作り続ける力」が必要
佐藤洋介さん
株式会社サイバーエージェント
執行役員
クリエイティブ統括室 室長
当社には「インターネットという成長産業から軸足はぶらさない。」という方針があり、逆をいうとそれくらいしか明確な方針はありません。時代の変化に合わせ、あらゆる可能性を探って事業化し、社会に還元しています。これまでユーザーサービスを多く生み出してきた経験を活かし、近年はDX Design室を立ち上げ、さまざまな企業のDX推進をサポートしています。変化が激しく、不確実性も高い市場の中で事業の成功確度を上げるためには、クリエイターの持つ「思考し続ける力」「つくり続ける力」が絶対に必要だと考えています。
当社には多摩美の卒業生が多く在籍しています。ビジネスでは物事に対する柔軟な思考力と、チャレンジ精神が重要ですが、多摩美の卒業生はその力を学生時代から身につけて社会に出ていると感じます。外部の企業と積極的にコミュニケーションを取る多摩美の文化が関係しているのではないでしょうか。以前、現役の学生たちとメディアデザインをテーマにした共同研究を実施したことがあります。サイバーエージェントが提供できる価値を学生のみなさんに伝えながら、社員も一緒に成長したいという気持ちがあり、共同研究には弊社所属の多摩美の卒業生も積極的に参加していました。
世の中には今、素晴らしいモノやサービスがあふれています。たくさんある選択肢の中からユーザーに選んでもらうには「良い戦略」が欠かせません。そのキーパーソンになりえるのが、デザインを学んだ人たちです。サービスやプロダクトを多くの人に見てもらうためにはどうしたらいいか、仮説を立て、トライアンドエラーを繰り返しながら実装に進むというのはデザイン思考そのもので、僕たちはアウトプットはもちろん、その思考のプロセス自体も大事にしています。物事をあらゆる角度から考えられるクリエイターとの出会いを、これからも楽しみにしています。
上流設計からロゴ・UI/UX・マーケティング広告・CMプロモーションまでサービス全体の青写真を描く
山幡大祐さん
2012年|情報デザイン卒
株式会社サイバーエージェント
主席クリエイター
クリエイティブ・ディレクター
私が所属するクリエイティブクオリティ統括室は、新規サービスの立ち上げやプランニングなどの上流設計を担う部署です。特定の事業に所属するのではなく、常に複数の事業に関わる形で動いています。一つの事業の立ち上げが決まったら、全体の青写真を描くのが私の仕事です。ロゴのデザイン、ユーザー体験の内容、UIのイメージなど、実際のサービスに関わる部分はもちろん、マーケティング広告、CMプロモーションのためのグラフィックイメージなど、サービス周辺のイメージ図も考えます。そうして出来上がった青写真をもとに、社内外にプレゼンします。
新規のアプリ事業であれば、実際にスマートフォンで操作できるところまでモックアップを作り上げます。あくまでイメージを共有するためのものですが、だからこそ、完成度の高いものを作るようにしています。完成形に近いものが目の前にあると、それをもとにレベルの高いディスカッションができるからです。
細部を伝えるためには、最終的には言葉でのコミュニケーションが必須です。美大を出た方は恐らく皆さん経験していると思うのですが、どんなに良い作品ができても、その良さを伝えることができなければ、価値に気づいてもらえません。私も学生時代、伝えたいことがあるのに伝わらず、悔しい思いを何度もしました。だからこそ、「伝わった」と思うときが仕事で最も喜びを感じる瞬間です。
人に伝えるというのは、とても難しいことです。私もいまだに試行錯誤していますが、言葉で伝える以外では、思いついたらすぐにアウトプットしてみることを大切にしています。その原点にあるのは、情報デザイン学科時代の恩師の永原康史先生の言葉です。在学中、頭で考えすぎるあまり行動できずにいた私に、先生は「やったらいいよ」と声をかけてくださいました。その言葉で心が軽くなり、アウトプットするたびに新しい発見がありました。学生の皆さんも「やったらいい」を合言葉に、フットワーク軽くいろんなことに挑戦してほしいです。
「クオリティ」と「事業」の調和を追求し、
多角的な視点でデザインする
湖中美緒さん
2017年|情報デザイン卒
株式会社サイバーエージェント
AmebaLIFE事業本部
リードデザイナー
新卒で入社後、最初に配属されたのは、コスメのクチコミサービスの新規事業でした。学生時代から新規事業に携わりたいと考えていたので、その希望が叶い、大変嬉しく思いました。数年間、コスメ新規事業のクリエイティブ業務に従事した後、スキルシェアサービスの新規事業でクリエイティブ責任者を務めました。現在は、AmebaLIFE事業本部の開発業務全般に携わっています。
最近の実績でいうと、Amebaの20周年記念サイトのデザインを担当しました。キービジュアルのコンセプトは、「20年の変遷と原点」です。 「Ameba」は生活に寄り添ったコンテンツを提供し、20年の歴史を築いてきました。生命感と変化、進化を表現し、「アメーバブログ」のロゴから着想を得て、20の形がアメーバのように動くデザインにしました。 さらに、今後も進化し続ける姿を表現するために、Amebaではこれまで使用していなかった3D技術を採用しました。この技術を用いて、世にない質感や変化し続ける色彩を理想的な形にまとめることは、難しい挑戦の一つでした。
入社してから現在までデザイナーという肩書きは変わりませんが、最近は会社の売り上げに直結する案件を多く担当するようになりました。デザイナーはアウトプットのクオリティを重視するので、売り上げや事業的な成果からは遠ざかりたいと考える人もいるかもしれませんが、私はクオリティと事業の調和を取りながら働くことに、やりがいを感じています。サービスのクローズを経験し、クオリティだけに特化しても事業として成立しないことを身を持って学んだからですね。今では多角的な視点でデザインすることを強く意識しています。
学生時代の私は「この学科に進んだら、将来この仕事をする」というように、自分が進んだ学科で選べる職種には制限があると考えていました。 しかし、今はっきり言えるのは、「出身学科とできる仕事は関係ない」ということです。実際、私と同じ職場にいる多摩美の卒業生のなかには、油画や建築・環境デザインなど、さまざまな専門分野の出身者が活躍しています。学生の皆さんも、自分に制限をかけず、やりたいことを最大限に追求してほしいです。