多摩美で育んだ着眼点と独創性で、多くの有名キャラクターを輩出
サンエックス株式会社
オリジナルキャラクターの開発およびオリジナルデザインによる文具や雑貨、生活用品などの製造・販売や、キャラクターデザインのライセンス展開を行う。『リラックマ』『すみっコぐらし』『こげぱん』『たれぱんだ』など、数多くの有名キャラクターを擁する。
https://www.san-x.co.jp/
2022年1月掲載
キャラクタービジネスの可能性を拡張し、潤いに満ちた豊かな社会を
うえはら かずのりさん
サンエックス株式会社
常務取締役
総務部長
サンエックスはキャラクターグッズを企画、製造して販売するメーカーですが、自社のオリジナル商品だけではなく、いろいろな企業と契約をして商品を販売していただくライセンス事業も行っています。文具や雑貨のみならず、ラッピングトレインやコラボカフェ、自治体の観光大使など、その点数、種類ともに年々増加傾向にあります。
当社の人気キャラクター『すみっコぐらし』が活躍する映画も2作公開されました。当初はお子さんをターゲットに想定して制作した映画でしたが、大人の方にも評判がよかったとのことで、キャラクターとは年齢問わず社会に潤いを与える存在だと実感しました。これからもキャラクターにできることを模索し続け、多方面にわたってビジネスを展開していこうと考えています。
基礎力の高さや豊富な作品量は美大生ならではの強み
『たれぱんだ』の末政ひかるさん、『こげぱん』のたかはしみきさん、『ピニームー』のすぎやままさこさん、『アフロ犬』のあいみてつろうさん、そして『すみっコぐらし』のよこみぞゆりさんなど、歴代のヒットメーカーには多摩美出身の方が非常に多いんです。現在は19名が活躍されていて、出身学科は油画、版画、グラフィックデザイン、テキスタイルデザインなど実にさまざま。テーマに沿ったキャラクターをその場で手描きしてもらう実技試験を行っているので、ファインアート系の学科出身者も多数採用されています。美大生はデッサンなど基礎がしっかりできており、ポートフォリオも相当数の作品を提出される印象を持っていますね。
若手にもヒットキャラクターを生み出すチャンスがある
オリジナルキャラクターを生み出す会社ですから、やはり独自の着眼点や独創性を持っている人を期待しています。また、『すみっコぐらし班』『リラックマ班』などチームで話し合いをしながら運営しているので、コミュニケーション能力も欠かせません。
新キャラクター誕生のきっかけとなる社内コンペティションには、キャリアを問わず全デザイナーが参加します。『すみっコぐらし』の原案がいちばん最初に通ったのは、よこみぞさんが入社して1年も経たない時期でした。若手にも十分チャンスのある職場ですので、キャラクター好きな方には積極的に挑戦していただきたいと思っています。
多摩美で学んだ表現力は「かわいい」を作るために欠かせないスキル
たかはし めぐはさん
2017年|グラフィックデザイン卒
サンエックス株式会社
制作本部 デザイン室
デザイナー
私は現在『すみっコぐらし班』でデザイナーをしており、2022年度に発売されるテーマのひとつのメインビジュアルの作成や、鉛筆や消しゴム、メモパッドなどのアイテム類、ぬいぐるみの図面の作成などを担当しています。ライセンスグッズや書籍、ゲームなどの監修業務も年間を通してあり、忙しくも楽しい日々を送っています。自分がデザインしたグッズが店頭に並んでいるのを実際に見るとやりがいを感じますし、もともとキャラクターが大好きなので、こうして仕事にできている今がとても楽しいです。
授業から得た経験で、いま最も役立っているのは「言葉での表現力」
小さい頃から絵本が好きで、絵本作家になりたいと思ったのが多摩美に入ろうと思ったきっかけです。入学してからも課題や絵本創作研究会のサークルで絵本を作成していました。オリジナルのキャラクターやストーリーを作ることが好きだったので、進路もキャラクター業界を目指そうと志しました。
大学で学んだすべての経験が今につながっていると思っていますが、中でも授業を通じて培った「言葉での表現力」が最も役立っているように感じます。課題をただ作成するだけではなく、制作意図や魅力を大勢の前でプレゼンテーションする機会がたくさんあり、初めはうまく言葉にできず苦手意識があったのですが、少しずつ克服していくことによって、自分の表現の幅が広がりました。デザイナーの仕事もひとりで完結するものではありません。デザイナー同士やプランナーと話し合ってアイテムの方向性を決めたり、キャラクターがもっと可愛くなるようなアイデアが閃いた際は提案したりと打ち合わせもとても多いので、学生時代にそうした言葉による表現が鍛えられる経験をたくさんしておいてよかった、と日々実感しております。
考えを視覚化して自分を知ることが、日々の生活を楽しくする秘訣
学生のみなさんには、頭の中だけで考えるのではなくて、自分の興味のあることは何か、何をしているときが楽しいのかなどを実際に紙に書き出して視覚化して、「自分を知る」ということをしてみてほしいです。自分を知るのに早いも遅いもないのですが、早くて得をすることはあるなと感じています。たとえば絵が好き、だから美大に入りたい、そのためには美術の予備校に通う方法もあるなと次のステップの発想が早めにできたり、やってみて合わなかった際はそれも書き出していけば、自分自身で自分が楽しくなれる方法を発見したり、工夫して行動できるようになったりすると思うんです。日々の生活を自分の力で楽しくするためにも、ぜひ試してもらいたいです。
キャラクターづくりを支えるのは「考えて生み出す力」
私は主に『リラックマ班』でデザイナーをしており、『リラックマ』や、先輩が作ったいろいろなキャラクターのアイテムの作成を担当しています。アイテムづくりだけでなく、それぞれのキャラクターでメインビジュアルの作成や、チームでSNSの運営のお仕事もしています。また、私がデザインした新キャラクターのクリアファイルをテスト販売するところまでこぎつけたのですが、残念ながらデビューには至りませんでした。いつかは自分のキャラクターを世に出して、少しでも多くの人のもとに届けたいです。
「作家にも就職にも道が開けている」と聞いて油画専攻へ
もともと絵を描くのが好きだったため、美大への進学を考えていたのですが、絵画学科なら作家になることもできるし、就職もできるし、卒業後の進路選択に幅があるというアドバイスを聞き、多摩美の油画専攻に進みました。
高校までは言われたことをこなしていけば成績がつくような生活を送っており、大学では与えられた課題に対して自分で考えて答えを導かないといけなくなって苦労しましたが、考えてものづくりをする、ということを鍛えられました。ひたすら自分と向き合って作品を作り出さなければいけない環境だったので、それが今、アイテムづくりや新キャラクターの提案に生かされていると思います。
100匹のオリジナルキャラクターで臨んだ採用試験
小さい頃からキャラクターが好きで、かわいいもので人を癒やしたい、少しでも誰かの力になれる仕事をしたいと思いキャラクター業界に進路を決めました。採用試験ではオリジナルキャラクターを100匹ぐらい描いたポートフォリオを採用試験で提出したのですが、たくさん描かなくちゃという気持ちになったのは、考えて生み出すという作業を大学で繰り返したおかげだと思っています。
サンエックスでは、毎日どこかから社員の「かわいい~!」という声が聞こえてくるんです。私もユーザーさんに「かわいい」と言ってもらえるアイテムやキャラクターを生み出せるように、他社はどんなものを出しているのか、何が今流行っているかなどのアンテナを張るようにしています。学生時代は自分の視野を広げるために図書館に入り浸っていたので、多摩美生のみなさんにも図書館をたくさん利用してもらいたいです。