企業の人事担当者・卒業生に聞く/宣伝・広報

アイデアをビジュアル化する力や 妥協せず研鑽を続ける粘り強さは、多摩美生の強み

株式会社電通

広告会社。コミュニケーション領域を中核に、顧客の経営課題・事業課題の解決までグローバルな事業展開を行う。国内外で活躍し、多数受賞経験のある著名クリエイターを数多く輩出している。
https://www.dentsu.co.jp/

2021年11月掲載


企業や社会の課題解決のためにフィールドを拡張していく力が求められている

三島 朱美さん
三島 朱美さん

株式会社電通
人事局
採用2部長

電通には本当に多くの多摩美出身者がアートディレクターとして在籍しています。2019年にクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した川腰和徳もその1人です。湖池屋のフラッグシップ商品『KOIKEYA PRIDE POTATO』のパッケージデザインや商品開発に携わり、映画『君の名は。』の地上波放送においてスポンサー企業同士のロゴを入れ替えるプロジェクトを成功させるなど、多岐にわたる活躍で受賞しました。この例や松永の話からもお分かりいただけるように、近年はアートディレクターと言ってもグラフィックだけにとどまらず、動画制作や体験設計など、アイデアをビジュアル化する力を発揮して仕事のフィールドを拡張している印象を受けます。

変化を作りだす側に立ち、未知を楽しみ、最後までやり抜ける人に期待

社会の課題を解決したり、世の中の動きを変えていくための方法は広告だけに限らず多様化しています。このやり方を模索していく過程で、必ず人の心を動かすためのアウトプットが生まれていくので、そのような場面で多摩美で培われたクリエイティビティや想像力を生かして活躍している方が非常に多いですね。いいものをつくるために妥協をせず、業務はもちろんのこと賞に応募するなど研鑽を惜しまない点も多摩美出身者の特徴です。
世の中は想像を超えるスピードで日々動いていますし、ビジネスとして社会と向き合っていく私たちはその変化を先んじて作っていく企業ですので、クリエイティブ領域においても変化や未知を楽しめる方、初めてのものにわくわくできる方、そして立案から最後のアウトプットまでをあきらめずにやり抜く力を持っている方にやりがいを感じていただけると思いますし、多摩美の卒業生に期待している点でもあります。

働きながら成長でき、人脈の広がる環境だからこそ、「好き」が仕事につながることも

社内にはワーク型のプログラムや、異業種のプロフェッショナルを招いての講義など多くの成長支援プログラム、社員が自発的にコミュニティーを作って勉強会をしている場などもあり、さまざまな研鑽やノウハウを吸収できる機会が多く設けられています。また、約6000社の取引先、グループ会社が国内だけでも約130社あるので、人とのネットワークも大事な経験やスキルになるでしょうし、自分の価値観を閉ざすことなく柔軟な発想力を磨くことができたり、ものづくりやクリエイティブの場面にもそこで得た思いがけない知識やひらめきを役立てられるのではないでしょうか。あらゆる方面につながりを持っている会社なので、自分の趣味や好きなものを社内で公言していると、いつの間にかそれが仕事につながるケースもよくありますね。「そんな仕事があったんだ」が生まれうる会社なので、「好き」を突き詰めている人が多いのも電通の特色のひとつだと思います。


大塚製薬『ポカリスエット』のアートディレクションを7年にわたって担当

松永 美春さん
松永 美春さん

2011年|グラフィックデザイン卒

株式会社電通
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アート・ディレクター

2014年から現在まで『ポカリスエット』のアートディレクションを手がけているのですが、その仕事の幅は広く、ロゴやポスター作成だけにはとどまらず、デジタルの企画を考えたり事業の拡大を担ったりと非常に細分化されています。ビジュアルだけを考えていればよかった時代ではもうなくなっているのですが、アイデアを可視化できる技術というのは美大で勉強を重ねたからこそ身についたことですし、今現在それが仕事において求められていると実感しています。

佐藤可士和さんから影響を受けて志し、考える力をひたすら訓練した学生時代

進路を選ぶタイミングで アトリエに通いはじめたのですが、17歳のときに佐藤可士和さんの作品に衝撃を受けてデザインの可能性に興味を惹かれ、多摩美のグラフィックデザイン学科に入学しました。第一線で活躍されている先生方が教えてくださるのでとても刺激的でしたし、学生の作品を見て喝を入れてくださるので、中途半端じゃダメなんだと気持ちが引き締まりましたね。出された課題は全部やって、考える力をひたすら訓練していた学生生活でした。就職課(現・キャリアセンター)でいろんな業界に就職された先輩のポートフォリオを見ていたのですが、広告業界の方の作品は1枚の絵で何を表現したいのかが瞬時に伝わったのが面白くて、そこで進路が固まりました。

多摩美で磨いたアイデアをビジュアル化する力が、チームの動きを変えると実感

入社して1~2年は仕事をするというよりも、会社が勉強させてくれたんです。大きい会社だからできることだとは思うのですが、ひたすら賞に応募したり広告年鑑を見て勉強したり、何がいいのか、何がわからないのか判断を自分でつけさせるような風潮があって、その自己研鑽の期間がとても力になりました。プロジェクトに携わるときはチームで動くのですが、アイデアや戦略をアウトプットしようとするとき、そのビジュアルを想像していいか悪いか見分けられる人がいないと実際に作ってからの判断になってしまうので、チームの動きが格段に変わるなと実感しました。特に『ポカリスエット』はビジュアルの力を上手く使って進めているキャンペーンなので、みんなが『ポカリスエット』に抱いているイメージや期待していることを考えるときに、ビジュアル化する技術が生きているなと思います。

心のセンサーを磨き続け、考えるのをやめないことが大事な時代

意外と自分が普段思っていることが強いメッセージになる場合があるんです。こういうときにどう思ったとか、こういうことをすると心が温かくなるとか、そういった小さなことを忘れずに、ちゃんと考えて、ちゃんと計算すればそのメッセージは必ず伝わるので、心のセンサーを常に磨き続けることが大事かなと。考えると道がひらけて、答えを導き出すことができるし、いいアイデアを思いつくといろんな人が救われるんですよね。大学で課題をやるにしても「なんでこれをやっているんだろう」と常に問い続けて答えを探すこと、考えることをやめないというのが、今の時代とても必要なことだと思っています。

クライアント:大塚製薬株式会社 企画制作社:電通・なかよしデザイン