企業の人事担当者・卒業生に聞く/メディア

アイデア力やマーケ視点に加え商品を世に出す粘り強さが新たなヒットを生み出している

株式会社宝島社

写真左から卒業生の皆川祐実さん、執行役員の藤定修一さん

『リンネル』や『GLOW』といった人気ファッション雑誌、付録付きのムック本『e-MOOK』シリーズ、ファッションや雑貨などの有名ブランドのグッズが付属したブランドムックの出版を行う。
https://tkj.jp/

2025年2月更新


個の力が問われる編集者として
どんな局面でも粘り強く向き合う姿勢が頼もしい

藤定修一さん
藤定修一さん

株式会社宝島社
執行役員コンテンツ&プロダクツ局局長

弊社は出版社という狭い範囲でなく、自社の定義では情報産業であり、情報を取り扱うことでコンテンツを創造し、市場に商品を流通させていくことが事業の主軸になります。もともとは地方自治体のコンサルティング会社からスタートし、創業3年目に月刊「宝島」を創刊。その後スピンオフさせる形でファッション雑誌を刊行して現在はファッション・モノ雑誌13誌の他、月刊誌『田舎暮らしの本』や書籍、ムックなど広く刊行しています。

2003年から、雑誌から派生して、ファッションブランドなどの付録付き本を戦略的に拡大していきました。売り先も書店だけでなく、コンビニへと広げて客層に合った商品開発も行っています。一例を挙げれば、パッケージの違いです。書店では箱の中に付録が封入されていますが、コンビニでは透明なパッキンで付録が見える形で販売するなどです。

編集部では多摩美の卒業生が編集者として3名活躍していますが、情報感度が高く、企画もユニークなので多くのヒットが生まれています。ブランド、インフルエンサーなど様々な切り口の企画案が出てくる。エンタメ業界にいる中で、「人を楽しませたい、物を作りたい」といった大きな熱量を感じます。それは入社前の面接の時から感じました。そして、自分の作りたい視点に加えて、マーケティング視点、つまり、消費者がどう考えるかを含めた洞察に長けていると思います。

弊社の物作りの過程では、クリエイターやブランドの方々と対峙してアイデアを具現化するためにせめぎ合いながら、オリジナルな物を完成させていきます。私が「もうこの企画から撤退した方がいいのでは?」と思った企画でも、「まだあきらめません」「実現する道はあります」と、商品化というゴールまで完結させる粘り強さがあります。その踏ん張りがあるからこそ、今まで世の中になかったヒット商品が生まれるのです。

物作りをしたい方にとって弊社は魅力的な会社です。社内の複数の人間と共同作業で物事を進めながらも、最後は編集者1人の力で企画を形にしてゴールまでもっていく醍醐味があるからです。そういう意味でも、物を作る楽しさとアイデアを持ち、完結する力を合わせもった人には大きな活躍の場があると思います。


大学の授業やプレゼンで「伝える力」を培った4年間
その武器があるから社会で戦える

皆川祐実さん
皆川祐実さん

2008年|情報デザイン学科卒業

株式会社宝島社
コンテンツ&プロダクツ局 第1部部長 兼 第1編集部編集長

2008年の入社以来、書籍、新書、DVD、付録付きの書籍、ムックなどさまざまな制作物に携わってきました。現在は、編集長という立場でブランドムックの編集や制作を行う日々です。

多くのものを作ってきた中で、印象深いのは幼少期から好きだったさくらももこさんの『コジコジ』のファンブックを作った時のことです。発売すると大きな反響があり、同キャラクターのライセンス管理をする会社から連絡を頂き、取扱を始めたというキャラクター「moz」をブレイクさせたいと、相談を受けたんです。それで、ムック本を作ろうと話が進み、数十冊の商品が生まれ、累計654万部を突破しました。好きがつないでくれた縁が一番のヒット作品になったのです。

大学時代、毎週のように作品を作っては、大勢の前でコンセプトなどをプレゼンする機会があり、また、講評をされることで鍛えられました。その際、どういう言葉にすれば人に伝わるか、と思考する習慣が身についたと思います。そうしたことが、社会に出た時に役立ちました。実際、宝島社は企画会議が毎週あり、つねにアンテナを張って考え続ける必要があります。ただ、私の場合は大学時からやってきた延長線に感じられ、それが「当たり前」となって、会議がきついと思ったことはありません。

「情報をどう伝えるか」を学ぶ学科なので、そのための手法をたくさん学ぶことができたことで、今、仕事をする際にたくさんの引き出しになっています。例えば、何かを伝えたい時、それは物なのか、映像なのか、それともインターフェースかなど、自分の中にたくさんの武器を携えることができた感じです。実際、入社後、テレビCMを製作した時、「どういう15秒間にするか」について、自分で絵コンテを書いて、CMプランナーの方にも協力を仰ぎながら、伝えたいメッセージを具現化することができました。

3、4年生の時に宮崎光弘ゼミに所属していましたが、先生からは「グッとくるものを作れ」と言われ続けました。「グッとくる」は人によって捉え方が違うけれど、感情を高める意味では共通の認識で、それを自分なりに感じたものや伝えたいことを発信する。それは、いまも物作りの根底にあります。作るものに熱量を持って、諦めない。そう思えるのは、私の個人的な経験も影響しています。じつは小さい頃に家族を亡くしたことで、「人生は何があるかわからない。今、全力じゃないと怖い」といったベースがあるからだと思います。

私は多摩美で学んできたものをすべて武器にして、社会人としての道を歩んでいます。同業者には美大出身の人は少ないのですが、揺るがない武器がたくさんあるから、自信をもって仕事に向き合えるし、発言もやることも遠慮せずに伝えられる。大学生活は刺激に満ち、鍛錬ができ、自分を解放できる場所でした。その4年間があったから、社会に出ても戦える。それは胸を張って伝えられます。