PBLの事例

パッケージデザイン基礎

グラフィックデザイン学科

見かけだけ立派だったり、ただ綺麗だったり、一方的に声高に叫んだりするマーケティングという名のもとに、不特定多数のあいまいな人たちへ向けたあいまいなデザインが行き場を失い始めています。企業の存在意義が問われている今、モノと人を結ぶパッケージデザインは、流通させ購買させる手段から、企業の代弁者としての重要な存在となりました。

日本人は大昔から贈る相手のことを考えて、包みや飾りなどさまざまな工夫を凝らし、贈るという行為に膨大な時間とエネルギーを費やしてきました。パッケージデザインとは、気持ちを伝えるために心をくだき、磨き上げた技術と美意識で受け取る人への想いをカタチにすることです。この授業では、学習内容をパッケージデザインの基礎と位置づけ、前期は三つに分類したパッケージの基本的機能について実践を通して学び、後期には二つの課題を通して企画立案〜デザイン〜プレゼンテーションまでを体験、学習します。「受け取る人への想いをカタチにする」ことがパッケージデザインの根幹であり、そのことを考え、実践するための授業です。

バナナ・テキスタイル

生産デザイン学科テキスタイルデザイン専攻

バナナは、赤道直下の熱帯・亜熱帯地方で多く栽培されています。バナナの実の収穫後、その茎は次の収穫のために伐採されるため、大量のバナナの茎が廃棄されています。 多摩美術大学バナナ・テキスタイル・プロジェクトは、廃棄されるバナナの茎から抽出した繊維を利用して織布・紙・ボードなどを生産するシステムの構築をめざし、2000年に発足しました。廃棄物の利用とデザインを融合させ、環境保全に貢献することを視野に入れ研究を進めています。

2006年に文部科学省現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に選定された後、地球環境問題とデザイン教育を連携させた授業をPBL科目として全学生を対象に展開しています。また2009年からは株式会社ドールのCSR活動として協賛支援を受けています。その他さまざまな団体・企業とパートナーシップを結び、バナナ生産国でのバナナ繊維の活用支援に取り組み、各国との交流を続けています。美術やデザインを専攻する学生が実社会と関わりながら、グローバルな視点と総合的な考察力を体得することをめざすプロジェクトです。

日常でいのちの意味を問うプロジェクト
(日本赤十字社×多摩美術大学)

環境デザイン学科

社会における自らの存在意義への問いが、モノでもお金でも名誉でもない文字通りのかけがえのない人道支援という行為に繋がっているといえます。美術大学だからこそできる大切なことの一つに、資本主義のゲームに乗らない人道支援というジャンルがあります。これに対して、アーティスト・デザイナーとして、とことん考え抜き、答えを出していくための授業です。

はじめに日本赤十字の方に献血ルーム、献血バスなどを案内してもらい、献血体験を行います。実際に献血を理解、学習し、企画立案のための情報を集めます。その後、毎週の授業の中でのグループディスカッションを通じて、企画立案を進めます。2〜3週間ごとに日本赤十字社の方にも、授業に参加してもらうことで、企画に対するアドバイスをいだきます。

中間発表1回を経て、それぞれのグループで立案した企画を日本赤十字社にプレゼンテーションします。その後、日本赤十字社の東京都赤十字血液センターにて、通過した企画案を最終プレゼンテーションとして発表します。最終プレゼンテーションを通過した案は、明治神宮外苑で開催される東京デザイナーズウィークで1週間展示します。展示コンテナや展示期間中に配布するリーフレットのデザインも行います。

衛星芸術プロジェクト(多摩美術大学×東京大学×JAXA)

情報デザイン学科

多摩美術大学と東京大学を軸として進められている「ARTSAT:衛星芸術プロジェクト」は、地球を周回する衛星を「宇宙と地上を結ぶメディア」であると捉え、衛星からのデータを用いたサウンドアートや、インタラクティブなメディアアート作品など、広く芸術作品への応用やデザイン展開、さらにはゲームやエンターテインメント活用を行っています。さらに2011年12月、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が提供する、平成25年度打ち上げ予定のH-IIAロケットに相乗りする小型副衛星として、本プロジェクトが提案した「芸術衛星 INVADER」が選定されました。この世界初の芸術衛星「INVADER」は、大きさ10cm角、重量約1kgのCubeSat(超小型衛星)で、2014年2月の打ち上げを目指して、現在精力的に開発が進められています。

ARTSATプロジェクトは、「美しい」芸術衛星のオープンかつソーシャルな運用を可能にすることで、衛星を専門家のための「特別なモノ」から、市民の日常の中の「身近なコト」へと変えていく、「みんなの」衛星プロジェクトです。宇宙を身近に「感じる」ことができる21世紀のアート&テクノロジーの一例として、社会に夢と希望を与えるプロジェクトに育てていきたいと思っています。

文化演出の現在

芸術学科

文化演出の現在では、実際に履修者全員で企画・出品・運営を行う展覧会を開催します。企画の立ち上げ方や、印刷物の作成、広報活動や作品設置の方法など授業内容は多岐にわたりますが、これらの演習は単に展覧会を実施したり、展覧会について知識を蓄えることを目的とするものではありません。理論・制作・実施といったさまざまな諸力が、いかに「展覧会」というものを構成するのかということを、実践に基づいて考察することを主旨としています。

展覧会を企画するにあたって、展覧会の「理念」「基礎的構造」「歴史的考察」「構築と意義」などの基礎的なテーマについて学習し、理解を深めます。また、それと平行して、自身の作品のプレゼンテーションを行い、お互いの制作や作品についての理解を深め、企画を立ち上げる足がかりとします。

2012年度は情報デザイン芸術学棟ギャラリー、学外展Bank ART Studio NYKで展覧会を開催しました。展覧会では、オープニングレセプションやアーティストトークなどのイベントを計画し、実施します。また、会期中に行う授業では全員でギャラリーをまわり講評会を行います。最後に企画した展覧会のデータを整理し、総括を行います。学内外のギャラリーやアートスペース巡りを行い、さまざまな展示のあり方について考察することで、自身の企画をより客観的にとらえる力を身につけます。最終的に展覧会の記録をひとつのレポートにまとめて、プロジェクト完了です。