本年度、TAMA VIVANTは、第28回目を迎えます。TAMA VIVANTⅡ展として第5回目となる本展は、7名の作家が出展します。
現代社会では、私たちの身の回りのあらゆる「もの」を分かりたい、理解したいという欲求はどんどんと膨れ上がり、ついにはものごとの多くの「もの」を単純化し、分かりやすい「もの」へと変えてしまいました。その結果思考は停止し、私たちはものごとを一義的に、そして表面的に解釈することにすっかり慣れてしまいました。そこには深い思索は存在せず、機械のように情報をただ享受するという「作業」のみが存在していると言えます。この「作業」を当たり前に行い続けた私たちは、自らが考えることを止めてしまったことに気づくこともなく、ただただ情報を受け取ることのみに重点を置いて生活をしています。この現状は私たち人間にとって、危機的状況と言っても過言ではないでしょう。本展覧会では、そういった現代のおかれている状況に警鐘をならすとともに、「もの」との新たな接点を探る機会となることを願っています。
私たちは、「もの」の印象にとらわれがちです。一つひとつの作品と対峙する時、一歩近づき、じっくりものを見ることによって、自らが探求することにより発見できる多くの情報が隠されていることに気づきます。発見は、「もの」との自由な距離の取り方によって生まれます。それは、何かを思考する最中に生まれた新鮮なひらめきに似ているのかもしれません。作品を繋げて見つめていく行為から、見つめる「もの」を繋ぎ合せる行為へと変化し、それにより、「もの」の思ってもみなかった可能性を見ることが可能となります。私たちはそんな過程のなかで自由な思考の海を泳ぎ、「もの」との関わりを深めていくのでしょう。
私たちを取り巻く社会情勢が激変していくなかで、私たちは「もの」へ歩み寄り、時に突き放し、新たな形で「もの」とともに生きる必要があります。本展覧会が、そうした「もの」との距離を自由にとれる感覚を、再生するひとつのきっかけになれば良いと思っています。