受講生のみなさまへ
このようなときに何処にいてもどんなときにも可能な、
すべての人が所有する能力―考えること、想像し、創造することが、
私たちの歴史を支えてきたように思います。
フランスの哲学者ミシェル・セールは、
「危機は多様性への回帰である。その証拠に多は可能なことであり、
それは未来に開かれている」と記します。
私たちの現在は、
例えば「グローバリズム」に代表されるような一貫して流れる基本的な傾向に、
それが正しいとされたシステムに、世界が流されてきました。
このような一元化が危険であることも見えてきました。
考えるときなのでしょう。
今を生きる私たちに初めて訪れた機会かも知れません。
私たちの前の障壁を打ち壊すこと、
そして私たちの場所を確保し、
日常という場所と出会う時間が必要です。
その時間で、
ともに生きることへの「参加」という深い意味を、
私たちは知ることになるでしょう。
生涯学習センターは春期講座のすべての講座を中止する決定をしました。
この異常な日常をそれぞれが生きることが大切と考えたからです。
異常な日常から異常が消えたとき、
みなさんと再びお目にかかり、
みなさんとともに この危機の時間に見つけた多様性を分かち合い、
未来に開かれた講座を、再び、ともに築き上げたいと思っております。
多摩美術大学 生涯学習センター長
海老塚 耕一