R・ラブグローブのカミソリ
Ross Lovegrove
1993

042  ロスラブグローブ(1958〜)はマンチェスター工科大学からロンドンの王立芸術大学に進み、1982年まで学んだ。90年代初期には、デザイン市場を国外に求めるイギリス人デザイナーの1人になっていた。  ラブグローブは家具、インテリア用品、調理器具、コンピュータなどの作品を、ノール社、バーン製陶社、フロッグデザイン、アルテンシュタイク社、カッペリーニ社、ソニー研究所向けに制作している。彼のデザインは、イギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアの光沢のある玉石の「マッス」の影響が見える。合理主義的な面も大いにあり、写真のカミソリは新素材や新技術に対するラブグローブの思い入れから生まれた。いわば、解決困難な問題に対する彼の明快な回答である。世紀末の自意識過剰なデザイナーたちの作品に対し、ラブグローブの簡素なカミソリは静かに違いを訴える。   オリジナル・プロトタイプに使用された刃は、歯科矯正に使われる最先端素材、アルミナ含有物量の多いセラミックを使用し、「ジルコン-Y」の名で知られる極薄のチタンメッキが施されている。どちらの素材も防腐・防錆材である。取り外しのできる刃が欠けなければかなりの長期間使用できるのである。これは企業利潤を買い換えに依存するカミソリ製造メーカ一にとっては、好ましくない特徴だった。


【素材】 刃はチタニウムメッキジルコンY、にぎリ部分は射出成型アクリル。写真はフカトタイプ

100 DESIGNS 100 YEARS
20世紀を創ったモノたち
メル・バイヤーズ/アーレット・B・デスボンド
森屋 利夫/成澤 恒人
2000.05.05
株式会社アクシス