情報デザインコースの3年次演習「サービスデザイン」(担当教員: 吉橋昭夫准教授)では、昨年9月より株式会社日立製作所と連携し、「信頼」を起点とするサービスデザインに関する産学共同研究を行ってきました。1月20日、その成果報告会がオンラインで行われました。
共同研究先の日立製作所 研究開発グループ 東京社会イノベーション協創センタ ビジョンデザイン部は、デザイン的アプローチで形成したビジョンによって社会イノベーションのあり方を考察する研究・デザインのセクションです。所属デザイナーの金田麻衣子さん (04年情報デザイン卒) 、田中久乃さんと共に、学生たちは約5か月をかけて『生活の中の身近にある信頼』を深掘りし、新しい「信頼のかたち」を考えること、それを基に新しいサービスをデザインし、利用者の経験をかたちにすることに取り組みました。
「実証」のプロセスを踏むことを徹底
今回、特に学生たちが徹底して行ったのは、「実証」のプロセスを踏むことです。ある一例では、学内の共有スペースで108ピースのジグソーパズルを完成させようと呼びかける実証実験を行い、共に一つのものを作り上げる経験の中で生まれる「信頼」があることを発見。そこからアイデアをふくらませ、街の中に地域の人々の口コミ情報を集めるタッチパネルモニターを設置し、街独自の観光地図を作りあげるというサービスに展開していました。
そのほか、家庭内のニュースを記録して共有する家族向けアプリや、初対面でも気軽に話ができる雰囲気作りを支援するソーシャルシールの開発など、計11作品の発表が行われました。その後、参加者を2つのグループに分け、それぞれの作品についてディスカッションし、日立のデザイナーの皆さんから講評をいただきました。
言語化と実証のプロセスから、ユニークなアイデアが生まれた
成果報告会の最後に、オブザーバーとして参加した日立の主管デザイン長の丸山幸伸さんが「信頼の量を可視化する方法、小さな好印象を積み重ねて信頼を築き上げる方法、コミュニティのメンバー同士が向き合い一緒に取り組む中で生まれる信頼など、様々なものが生み出されましたが、そのコンセプトの一つひとつに、信頼を生む秘訣、法則が宿っていたように思います。それらをもう一度、振り返ってみて、『信頼のモデル』として捉えなおすことができたなら、それは皆さんが、プロのUX・サービスデザイナーになったときの、強力なデザインツールとして使えるものになるでしょう」と総括しました。
それを受け吉橋准教授は「今回のプロジェクトでは、各自が見出した信頼についてしっかりと言語化を行った。また、コンセプトを固めて実証を徹底したことで、面白いアイデアや表現が生まれたのでは」と話し、共同研究の機会をいただいたことに謝辞を述べました。
日立のデザイナーの方々と共にワークショップも実施
池田遥香さんの作品:パズルの完成を呼びかける実証実験の結果から街独自の観光地図を作るサービスに展開
河井あかりさんの作品:信頼されると期待にこたえたくなるという実証実験の結果から家族向けのアプリを開発
陳欣さんの作品:事前にある程度情報を共有しておくことで初対面でも気軽に話せる「ソーシャルシール」の仕組みからアプリでのサービス展開まで考案
関連リンク
[プレスリリース]日立製作所と多摩美術大学が「信頼」を起点とするサービスデザインの産学共同研究を実施
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