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カンヌ、アヌシー国際映画祭出品作『化け猫あんずちゃん』、多摩美生限定試写&久野遥子・山下敦弘監督トーク会開催


ステージ上の左側久野遥子監督、右側山下敦弘監督がアニメキャラクターあんずちゃんのぬいぐるみと共に笑顔で学生たちに映画について買っている
写真左:久野遥子監督、写真右:山下敦弘監督

7月19日(金)より全国公開中の日仏合作アニメーション映画『化け猫あんずちゃん』の多摩美生限定試写会を、6月29日(土)に八王子キャンパスのレクチャーホールで開催しました。また同日、2013年グラフィックデザイン学科卒業の久野遥子監督と山下敦弘監督によるスペシャルトークイベントも開催されました。

この作品は、コミックボンボン(講談社)で2006年から2007年まで連載されたいましろたかしさんによる漫画『化け猫あんずちゃん』を原作とした劇場アニメーション映画作品です。実写で撮影した映像をトレースしてアニメーションにする「ロトスコープ」という手法で制作されました。アニメーションパートの監督を久野遥子さん、実写パートの監督を山下敦弘さんが務め、俳優の森山未來さんが主人公の化け猫「あんずちゃん」の声と動きを担当しています。この映画は第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」にて公式上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭2024の長編コンペティション部門にも正式出品されました。

試写の後には、久野監督の本学在学時の恩師であるグラフィックデザイン学科の野村辰寿教授の司会進行により、久野監督と山下監督のスペシャルトーク会が行われました。企画の立ち上がりから8年をかけて制作されたことや、俳優の実写の芝居をデフォルメされたアニメーションのキャラクターに落とし込む表現法の探りかたなど、数々の制作秘話が披露されました。

特別試写会後のトーク会で、大型スクリーンを背に左から久野遥子監督、山下敦弘監督、野村辰寿教授がステージ上で椅子に座り、観客に向かって話している
グラフィックデザイン学科野村辰寿教授(写真右)の司会により、笑顔の絶えないトーク会が進行しました
企画から8年を経て公開を迎える映画について学生に語る山下監督
ロトスコープ制作にあたり、俳優の演技をデフォルメの強いキャラクターでどのように表現するかを語った久野監督

また、この日に合わせて学生たちから「猫」をテーマにした作品を募集し、平面や映像など制作ジャンルを問わず集まった作品の中から、久野監督と山下監督が「お気に入り」の作品を選び、特別講評も行われました。

舞台上の大型スクリーンに久野監督と山下監督のお気に入り作品が投影され、前で学生が作品講評を受け記念のイラスト色紙を受け取っている。
久野監督、山下監督選出による学生作品の特別講評の様子

試写&トークショーの後に行われたインタビューでは久野監督、山下監督が作品を制作する際に大切にしていることや多摩美生だけでなく、ものづくりが好きな、美大を目指す中高生に向けたメッセージも寄せられました。

社会人でも子どもでもない、大学時代にしか無い時間と出会い

山下監督:「僕は映画が好きで、映画を作りたいという価値観だけで大学に進学したけれど、大学に入って一番驚いたのは色々な価値観の人がいて、自分より面白い人はいくらでもいるということ。その人たちとの出会いの中でやっぱり自分は映画作りをやりたいんだということに気づいたし、映画を一緒に作る仲間にも出会えた。学科の空気を作ってくれた当時の先生の存在も大きい。人々に揉まれる中で自分自身が何をやりたいのかが見えてくる4年間が、大学の価値そのものだと思う」

久野監督:「絵を仕事にすることを考えると、特にアーティストは年齢もセールスポイントになることがあるため、早く売れたいと思う人もいるでしょう。その時、大学進学は遠回りに感じるかもしれません。でも山下監督も仰ったように、広い世界を知り、人がやっていることを知る、これまで興味がなかったことに触れるといった大学生活から、より面白いことに気づけることがあります。特に絵を描くことや表現することに関しては、遠回りに感じることが結果として近道になることもあります。仕事になると「売れるもの、分かりやすいもの、明るいものを作らなければならない」となりがちですが、大学ではそれとは全く違うことを4年間学ぶことができます。それがのちのち糧になります。大学時代はそれ以外では手に入れることのできない貴重な時間だと思います。」と話しました。

ステージ上に久野監督、山下監督、野村先生と「猫作品」を応募した複数の学生らが賞状を持っている集合写真
映画『化け猫あんずちゃん』予告編
映画化け猫あんずちゃんオフィシャルポスタービジュアル。画面中央巨大な大仏の足元に主人公のあんずちゃんとヒロインのカレンちゃん

ストーリー

雷の鳴る豪雨の中。お寺の和尚さんは段ボールの中で鳴いている子猫をみつける。その子猫は「あんず」と名付けられ、それは大切に育てられた。時は流れ、おかしなことにあんずちゃんはいつしか人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」になっていた。
移動手段は原付。お仕事は按摩のアルバイト。現在37歳。そんなあんずちゃんの元へ、親子ゲンカの末ずっと行方知れずだった和尚さんの息子・哲也が11歳の娘「かりん」を連れて帰ってくる。しかしまた和尚さんとケンカし、彼女を置いて去ってしまう。
大人の前ではいつもとっても“いい子”のかりんだが、お世話を頼まれたあんずちゃんは、猫かぶりだと知り、次第にめんどくさくなっていく。
かりんは哲也が別れ際に言った「母さんの命日に戻ってくるから」という言葉を信じて待ち続けるも、一向に帰ってこない。母親のお墓に手を合わせたいというささやかな望みさえ叶わないかりんは、あんずにお願いをする。「母さんに会わせて」
たった一つの願いから、地獄をも巻き込んだ土俵際の逃走劇が始まる。

映画概要

2024年7月19日(金)全国公開
監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社 KCデラックス 刊)
キャスト(声・動き):森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ 音楽:鈴木慶一 編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子 作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督& 色彩設計:Julien De Man コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人 CG監督:飯塚智香 音響監督:滝野ますみ
実写撮影協力:マッチポイント
撮影:池内義浩 録音:弥栄裕樹 スタイリスト:伊賀大介
主題歌:「またたび」佐藤千亜妃(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一 Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT