予感, 気配

梅田 重明

担当教員によるコメント

梅田重明は、絵の素材として日常の一コマやホラー映画のワンシーン、ネット画像を用いている。そしてその目的について、梅田自身は「本来存在していたコンテクストから素材を切り離し、差異を際立たせる事で記憶のもたらす不明瞭な既視感を可視化する」と発言していた。この言葉が意味する事とはいったい何か。梅田の作品を注視すると、もののかたちから外れた筆跡があり、また植物の枝や葉がその存在の役割をはみ出し人の顔を示唆するように描かれている。それは異なった性質を持った複数の存在物が、単一的なストーリーをつくるためにそれぞれ接続しようと試み、うまく接続しきれずその狭間でノイズを発しているように見えるのである。私たちが記憶するものは単一的なストーリー(文脈)には収まらない。それは他人に自分の過去の出来事を話している時に気づくはずだ。つまりテレビドラマの回想シーンのようにはいかないのである。そして常に残余感(ノイズ)が付きまとう。だから記憶とは不明瞭であると言える。梅田の絵画は、単一的なビジュアルイメージを求めたものではなく、ノイズを生成する機能そのものなのだ。

准教授・栗原 一成

  • 作品名
    予感, 気配
  • 作家名
    梅田 重明
  • 作品情報
    『予感』
    技法・素材:油彩、キャンバス
    寸法:H259×W194cm

    『気配』
    技法・素材:油彩、キャンバス
    寸法:H162×W130cm
  • 学科・専攻・コース