泳がぬ魚

小林 奈央実

担当教員によるコメント

小林の卒業制作はキャンバスに描かれた画像の上にプロジェクターでイメージを投影したものだ。2点のうち1点には布団が描かれており、もう1点は縁側の物干しが描かれている。どちらも何の変哲もない日常の風景である。その上に投影される泡や水槽、洗濯物の画像も特別なものではないが、小林の手にかかると映像と絵画の二つの要素が相まって、静かで深い安らぎの感覚を醸し出してくる。おそらく小林がこの作品を作るに至った経緯は先の震災の影響がある。日常の生活は淡々と続いていくものではなくて、実は儚くて貴重なものであることを思い知らされたからだ。小林はそういった思いで当たり前な日常を見直したのだろう。その作品は束の間の光に乗せて、日々の生活を輝くものに変貌させている。

教授・菊地 武彦

  • 作品名
    泳がぬ魚
  • 作家名
    小林 奈央実
  • 作品情報
    技法・素材:油彩、キャンバス、映像、プロジェクター
    寸法:H145×W227cm
  • 学科・専攻・コース