蒼の林

白鳥 絢子

担当教員によるコメント

白鳥は基本的には描写的な仕事を貫いてきた。描写的な仕事は誰が見ても親しみやすい反面、客観的な批判にさらされやすい。例えば私たちは数々の名作を目にしている経験から、作品に対して技術的に頂点に在る作品と比較するし、また品格の価値判断を持っている人は、それらと照らし合わせて作品を見る。つまり具体的な描写表現であるからこそ厳しい目に晒されるのである。白鳥の作品は多くの時間を必要とする。そして描けば描くほど作品の深度が増し説得力を持つ。ただ白鳥のように研ぎ澄まされた観察力と卓越した技術力がなければ、どんなに時間を費やしても絵画の深度や品格を高める事は出来ない。卒制の作品は「やりすぎてしまった」と本人が言っているが、やりすぎるという一種の過ちは、若いからこそ経験できる貴重なものである。

教授・室越 健美