らっかすい

小野 円花

担当教員によるコメント

小野くんは方法意識の鮮明な、極めて知的な作家だ。その作品は自ら措定した知的な制作方法に、厳密に貫かれている。しかし、そうでありながら結果として出現した絵画は、方法に縛られるきゅうくつさをみじんも感じさせず、深々とした空間性を内包している。「らっかすい」は滝を描いている。ごく薄く溶いた透明な絵具で、滝を描く。それだけでは、ほとんど何も見えない。次にまた、その層の上に同じように滝を描く。前の層とは微妙なずれが生じる。それでもまだ見えない。また繰り返す。そんな作業を何十層と繰り返していくうちに、画面は豊かな空間を孕みながら、やがてその朦朧とした画面の中から落下する滝が出現してくるのだ。知的制御と絵画的豊かさがみごとに同居した、優れた作品だ。

教授・堀 浩哉