紫煙をくゆらせる

西村 征暁

作者によるコメント

タバコの臭いを吸い込むと、小さい頃から苦手だった父親のことを思い出します。社会人になる前に父親の存在を通して「大人になること」を理解したいと思って描いた作品です。

担当教員によるコメント

大嫌いなタバコの臭いとして子供の頃に焼き付けられた父親についての回想が、成長して大人の男性になっていく自分の姿と重ねられるモノローグ的アニメーション作品。吐き出されるタバコの煙、黄色い歯、灰皿に盛られたシケモクの山、父親のすね毛と、好きになれなかった父親の姿がそれらによって表される。青年期を迎え、大人へと成長していく自分自身と、どのように向き合えばよいのか、エディプスコンプレックスとともに刻印されている父親像として捉えるしかない、今後の自分自身とどう向き合えばよいのかを探すため、記憶を内省するように自問自答するようにして、作者は作品を紡いだ。しかし、この作品における自分への問いかけは、同時に自分の中にある父親―大人の男の象徴として、これからの人生に影を落とし続けるであろう父親へ向けての問いかけでもあるというパラドックスを内包している。

教授・佐々木 成明