交流のないソーシャルネットワーキングサービス「penmap」とそれに向けたプロダクトの提案

矢澤 なつき

作者によるコメント

・サービスについて
物語を読んで登場人物に自分自身を重ねたり、他人の話を聞いて、あんな風になりたい、こんな風にはなりたくないと思った経験や感覚はありませんか。penmapは、自分自身を振り返った上で他の誰かの記録を読むことで、誰かと自分を比較したり参考にしながら自らの考えを整えることができる場所です。誰かとの記録の共有を行うため、インターネットを媒体としますが、記録は全て手書きで端末に記入します。

・プロダクトについて
今回は、このサービスが提供する体験にふさわしいプロダクトも一緒に提案しています。開いた時に一枚の紙のような印象を与えるドキュメント(端末)は、自分を記録するという体験をより豊かなものにし、側面の傾斜やドキュメント全体の適度な厚みが、読む際に一冊の本のような存在感をもたらします。また、筆記具はそれらしい見た目かつそれぞれに一つの書き味を持たせることで、直感的に「書く」という行為を実現します。

担当教員によるコメント

さまざまなコミュニティがSNS上で形成される現代は個人の居場所を幾重にも持つことができるようになった。そのことで人々との関係性が重く感じられる人が増えているのは皮肉なものだ。作者は今や当たり前になった反応や交流の一切をなくすことでSNSの役割を再考した。閲覧できるのは書き記された文章と筆跡のみ。まず自分の歴史をふりかえり、その文章を閲覧可能にする。すると、誰かの記した人生を読むことができる。書体を統一せず個人の筆跡をそのままにすることで、より感覚的で親近感のあるインターフェースとしても機能させている。自分の生き方をふりかえり考えを深める静かなひととき。暮らしにふさわしいデジタル情報の扱い方と物理的な操作表現について微細に吟味している。

教授・大橋 由三子

  • 作品名
    交流のないソーシャルネットワーキングサービス「penmap」とそれに向けたプロダクトの提案
  • 作家名
    矢澤 なつき
  • 作品情報
    技法・素材:プラスチック、アクリル、革、金属、紙
    サイズ:H257×W320×D12mm
    作品形態:サービスとプロダクト
  • 学科・専攻・コース