重力と動き

粥川 青葉

作者によるコメント

重力とモノの形の関係によって、人が不思議だと感じる動きを作る研究を行い、2つのシリーズのオブジェを制作しました。これらの動きは全て、単純な仕組みで作られています。だからこそ、人の触り方によって毎回異なる遊びや揺らぎが生まれ、「健気だな」「かわいいな」「不思議だな」といった、見る人の感情をひきだします。人とモノの関係を少し豊かにする、不思議な存在を目指しました。

1.Solid
色のついた部分に重りを隠すことで、重心の位置を変化させた、6つのオブジェのシリーズ。単純な見た目に反して、予想のつかない動きをします。
2.Flame
重りを隠さない、フレームの構成でできた、2つのオブジェのシリーズ。モノを取る/置くという、人の日常的な動作を、不思議な動きに変換する仕組みになっています。

担当教員によるコメント

モノの形と重量の関係/バランスを変えることで、モノは随分とアトラクティブになるということが、粥川青葉さんの制作アプローチを通して感じ取れる。作品の見た目の印象と手で触れた際の動きの印象とが大きく異なり、作品を前にした人たちの予想を軽快に裏切ってくれる。キネティック・アートの中には、重量バランスの変化を用いて不可思議な動きをつくり出す作品もあるが、生活の周りでちょっとした機能を持つ暮らしのアイテムに、そうした動きの変化を持ち込むことで、見ていて飽きない楽しさがもたらされる。動きをつくるに際し、電気的なメカニズムを使わず、重量バランスのみを用いていることも、作品が体験者の肌感覚と近いところにあり、かわいさ、ほっとできる感覚につながっている。

准教授・濱田 芳治