プロトタイピングの塗装処理におけるイメージ共有の潤滑化

作者によるコメント

他者のイメージを潤滑に共有することで、よりデザインワークが昇華するのではないかと考え、新しい形の塗装サンプルと、それを学生が作るためのサポートキットを制作した。塗装サンプルは従来より凸凹の起伏を強くし、ひとつの形で様々な階調の色が観察できる。またサンプルを重ね合せることで、オーバーコートしたときの塗装色の予想が可能。さらにコントラストのついた盤面上で使用することにより、下地色の影響もシミュレーションでき、他者と塗装色の具体的なイメージ共有を図ることができる。サポートキットは学生自らがサンプルを作ることで、塗装の造形・知識を身に付けることができると考えて制作した。３巻構成となっており、キットの中にはテキストとそれに対応したサンプルが４つ、そしてテキスト内には作業風景のムービーが見流ことができるQRコードもあり、様々な角度から学習に臨むことができる。この作品によって将来的なモデラーとデザイナーの橋渡しになれば私は幸いである。

担当教員によるコメント

作者はプロダクトザインを学ぶ中で、プロトタイピングに関して卓越したセンスと能力を持った学生でした。その中でも特に塗装や表面処理に関して興味持ち、いろいろな道具を駆使し、自分で試行錯誤しながら工夫を加え、表現能力の幅を広げて行きました。この卒業制作は、それを後輩に伝えたいという彼の思いから企画されました。とかくデジタル機器やデータによる表現が主流になるつつある今のプロトタイピング中で、感覚的に感じること、デジタル化できない感性をどのようデザイナーが扱い、表現するべきかを深く考え、そのノウハウを経験則だけに止まらずに、客観的に分析して、具体的なサンプルと美しいガイドブックとしてまとめた努力は高く評価できます。

教授・田中 秀樹