Time Lapse

横田 みのり

担当教員によるコメント

横田さんは一年生初めから熱心にワークショップ授業を受けていた。いわゆるモダンダンスやコンテンポラリーダンスの経験があったのではなかったと私は記憶している。ダンスに対して予備知識がなかったことによって、彼女の先入観無しの素直な気持ちと身体は授業に向いつづけていた。気取りや力みが無く、澄んだ気持ちが根源にある者には、それまでに持ち得なかった技術が着実に身につく。それは努力へ与えられた恩恵である。二年が過ぎ、三年生になり卒業制作の準備に入った時には成長過程にありがちな多少の混乱に巻き込まれたが、彼女は正しく忍耐を学び、精神を鍛える時期を堂々とした態度で生き抜いた。その頃から彼女の語る言葉は明瞭になり、当然ダンスの技術は着実に進歩した。四年の前期に私は新たな課題を制作者たちに与えた。一流を目指しなさい。学生くさい甘えが微塵もないものを作るのだ、と。彼女は普段他の学生たちに影響を与えるような言動はせず、黙々と自作に力を注いだ。その姿勢は図らずも他の悩み多き同僚に力を与え、あるべき方向を示した。結果としてとても良い作品を提示したが、それ以上に、困難を乗り越えて喜びを共有できるまで持続した彼女の意志の強さを私は讃えたい。良い準備無しに良い結果はありません。あなたは四年間を最善のやり方で生きました。おめでとう、そしてありがとう。

教授・勅使川原三郎

作品情報

演劇舞踊デザイン学科の卒業制作について

演劇舞踊デザイン学科は「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」の2つのコースに分かれ授業が行われます。1、2年次はそれぞれのコースで基礎を学び、3年次には2つのコースの合同制作として上演制作実習を行います。その成果を踏まえ、4年次では本学科における最終的な目標である「卒業公演」に向け「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」との合同制作のさらなる質的向上を追求します。目指すは、プロのレベルに比肩し得る作品の創作です。「演劇舞踊コース」ではパフォーマーとしての表現能力を、「劇場美術デザインコース」では美術、照明、衣裳等のデザイナーとしての斬新な発想力やスタッフワークの実践力を最大限に究めるために演習と実習を積み重ねます。

演劇舞踊デザイン学科初めての卒業制作は素晴らしい内容でした。卒業公演「大工」は、東京芸術劇場で演劇コースと共同で上演され、観客を魅了する独創的でエネルギッシュな舞台表現でした。舞台・照明・衣裳ゼミが一体となり、脚本構成と連動した見事な舞台美術が展開されました。映像美術ゼミは、映画美術・PV・MV・インスタレーションと多彩な卒業制作が繰り広げられました。それぞれの個性と感性によって開花した意欲作が並びました。映画美術設計は、緻密で大胆なデザインであり、PV作品は総合的なセンスが感じ取れる秀作です。エンターテインメントデザインの評価は言うまでもなく、観客の皆さんが楽しみ感動してくれることに尽きます。観客のアンケートからも、その目標は軽くクリアしていました。