卒業公演(演劇)『大工』作・演出 柴幸男 舞台美術デザイン

須澤 里佳子

担当教員によるコメント

3年次の上演制作実習での課題作品『大工』(柴幸男・作・演出)の舞台美術デザインを担当した舞台美術ゼミの須澤里佳子が、再び卒業公演の『大工』の舞台美術デザインに取り組んだ。脚本もさらに洗練され、上演劇場も学内スタジオから東京芸術劇場シアターイーストに場所を移し、作品のスケール感も大幅にスケールアップした。須澤里佳子はただ劇場に合わせてスケールを大きくしただけではなく、演出の柴先生と脚本の細部にわたり、ディスカッションを繰り返し、この作品が意図するところを細かいところまで見事に表現することができた。特に須澤がこだわっていたのは、全体の色を「白」にしたいということだった。未曾有の災害によってすべてが失われた世界を人々の力を合わせて再生していく、そして将来への希望につなげていく、すべてを白という色で、視覚的だけでなく、破壊〜再生〜希望というプロセスにおいての人間の内面を表現できたと思う。もちろん照明、衣装すべての調和がこの舞台美術デザインの成功へと導いている。学科の記念すべき第1回目の卒業公演のこのレベルを2回目以降も落とすことなく、またこれを上回るように、私もいっしょに走っていきたい。

教授・金井 勇一郎

作品情報

模型・スケッチ・図面

演劇舞踊デザイン学科の卒業制作について

演劇舞踊デザイン学科は「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」の2つのコースに分かれ授業が行われます。1、2年次はそれぞれのコースで基礎を学び、3年次には2つのコースの合同制作として上演制作実習を行います。その成果を踏まえ、4年次では本学科における最終的な目標である「卒業公演」に向け「演劇舞踊コース」と「劇場美術コース」との合同制作のさらなる質的向上を追求します。目指すは、プロのレベルに比肩し得る作品の創作です。「演劇舞踊コース」ではパフォーマーとしての表現能力を、「劇場美術デザインコース」では美術、照明、衣裳等のデザイナーとしての斬新な発想力やスタッフワークの実践力を最大限に究めるために演習と実習を積み重ねます。

演劇舞踊デザイン学科初めての卒業制作は素晴らしい内容でした。卒業公演「大工」は、東京芸術劇場で演劇コースと共同で上演され、観客を魅了する独創的でエネルギッシュな舞台表現でした。舞台・照明・衣裳ゼミが一体となり、脚本構成と連動した見事な舞台美術が展開されました。映像美術ゼミは、映画美術・PV・MV・インスタレーションと多彩な卒業制作が繰り広げられました。それぞれの個性と感性によって開花した意欲作が並びました。映画美術設計は、緻密で大胆なデザインであり、PV作品は総合的なセンスが感じ取れる秀作です。エンターテインメントデザインの評価は言うまでもなく、観客の皆さんが楽しみ感動してくれることに尽きます。観客のアンケートからも、その目標は軽くクリアしていました。