アンリ・リヴィエール , 世界の影絵史における再発見

久城 美穂

作者によるコメント

19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの画家・版画家、アンリ・リヴィエール。浮世絵の技法を独学で習得するなどジャポニスムの影響を受けた芸術家だ。版画制作の一方で、彼はカフェ「シャ・ノワール」において影絵劇の制作を担った。本論では、この影絵劇に着目し、日本だけでなく中国やヨーロッパの影絵の影響を考察する。彼の影絵劇を世界の影絵史の中に位置付けようと試み、ジャポニスムとの関連で語られることの多いリヴィエールの作品の多面性を指摘する。

担当教員によるコメント

19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの画家・版画家、アンリ・リヴィエールは、浮世絵の技法を独学で習得し、ジャポニスムの影響を受けた芸術家として、わが国でも展覧会がなされてきた。しかしその芸術は、たんに浮世絵などからの影響ではなかったこと、すなわちリヴィエールが、世界に知られるパリのカフェ「シャ・ノワール」において影絵劇の制作を担ったことに注目し、本論では影絵劇が表現する陰影やモノクロームのコントラストの芸術を検証しつつ、中国、そしてその影響を受けたロココ様式、そしてギリシャにまで横断でき得る世界の影絵史の中に、リヴィエールの芸術を位置付け、ジャポニスムの比較論から解放するかたちで捉えなおした考察は高く評価できる。

教授・鶴岡 真弓