Material of me, 自身の過去体験のイラスト

笹原 美裕

作者によるコメント

大学生活中、「あの時〇〇したから、今〇〇だな」と感じることがよくありました。その実感から、今まで出会った人、行った場所、そこで感じたこと等が自分自身を作るものなのだと考えました。その過去体験を、4年間で最も得意だと感じた「イラストレーション」で、自分らしいと感じた「量産する」表現に仕上げた作品です。

担当教員によるコメント

笹原は「いままでの人生を一枚の絵巻物のようにまとめたい」と言った。個人的なことを卒制にするのはどうだろうかという葛藤があったようだがなんのことはない。作品は個人的な思いからスタートするべきだし、それが結局説得力を放ったものになるのだ。登場するのはすべて猫。細部にわたって描き込まれたその様々なシチュエーションに笹原の人生の物語を内包させているのだ。ジブリの群像表現のように丹念にそれぞれ描写されている。これらはすべて手書きで水彩絵具で描き込まれているのに驚く。なんでもコンビニエントに処理できる時代において、鑑賞する者はあらためてタブロー画の強さと魅力を感じたことだろう。ちょっとしたアクシデントや切なかったこと、誰もが体験したような印象深かったことを盛り込んだり、まるで笹原の人生の都市をドローンで巡っているようだ。ほどよくコントロールされた色彩感覚も秀逸。「みられる意識」を強く持ち、個人的表現をひょいっと超えて「デザイン」となった。笹原本人の優しい眼差し、人への感謝、朗らかさ。もしかするとこれはご両親への最高のギフトなのかもしれない。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・小杉 幸一、榮 良太